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日常、そしてまた。
事件解決から1週間後。
「暇ですわ〜〜〜!!!!!」
「つい最近、誘拐されたばっかでしょ」
坂之上は新聞を読みながらそう答える。
幽霊犯罪に特化した探偵事務所ではあるが、毎日のように事件が起こるわけでは無い。
普段は専ら暇を持て余すか、探偵としての仕事がちらほらと舞い込んでくる程度だ。
「そうですけれども! もっとこう、世界の破壊を目論む秘密結社だとか! 人間の裁定をする機械神だとか! そういうのを懲らしめる依頼は来ませんの!?」
「アニメの見すぎだねぇ。というかそれはオジサンの専門外だ」
「でも! でも、思ってたより……地味ですわ!」
鳳凰院は頭を抱えて首を振り、自慢の金髪ドリルが揺れる。
それを横目に見た坂之上はやれやれといった表情を浮かべる。
「地味な仕事ほど大事だったりするさ。縁の下の力持ちってね」
「うう〜っ……。それは分かりますが……」
「平和に越したことはないでしょ」
「ううう……」
鳳凰院は長テーブルに突っ伏す。余程ヒマなようだ。
そんな、穏やかでのんびりとした日常を、坂之上のスマホの着信音が遮った。
ピリリリリ……。
「依頼ですわーーーーーーー!!!!!」
「はいはい、人が電話する時は静かにね。こちら坂之上探偵事務所」
「おはようございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!幽犯課です!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳と頭が痛くなる。
坂之上は通話をスピーカーに切り替えて机に置いた。
「休日の朝から元気だねぇ。上司に変わってくれる?」
「分かりました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
少し待つと、通話相手が静かで落ち着いた声に変わった。
「本当にいつもうちの新人が申し訳ありません」
「新人教育お疲れ様。──それで、今回の依頼は?」
「どんな依頼が来るのかワクワクですわ〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
ここは対幽霊犯罪特務探偵事務所坂之上。縮めて、坂之上探偵事務所。
今日もまた、幽霊が起こした奇怪な事件に巻き込まれていく──。
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