99人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
シュガー・レイン
「この雨が、ぜーんぶ飴玉だったらどうなるのかな」
「うーん、普通に痛いんじゃない?」
どんよりした灰色から滴り続ける雫を見つめて、ふと溢されたバカな言葉に、笑うことなく返ってきた正論。
「じゃあ、砂糖だったら?当たっても痛くないよ?」
「ふふ、全身ベトベトになりそうだから俺は嫌だな」
「あー、たしかに。」
微笑んだ拍子に頬にまつ毛の影が落ちる。彼の綺麗な横顔に、私は見惚れながら、なんでもないように声を出した。
「みんな雨嫌いって言うから、何ならみんな喜ぶかなって考えたけど、うーん、結構難しいね」
「雨は、雨でいいんじゃないかな?」
「そう?」
「うん、俺は…雨、好きだよ。」
「っ、」
突如、一ノ瀬がこちらを向いた。その瞬間、心臓が飛び出るかと思った。
「…わ、私も…好き、雨。」
…だって、雨は君との時間をくれるから。
最初のコメントを投稿しよう!