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「一ノ瀬、ナイッシュー!」
学校の正門を抜けてすぐのところにあるバス停からは、サッカー部の練習場がよく見える。
帰りのバスを待つ間、その練習を見るのが私、高瀬彩奈の日課で…。この習慣ももうすぐ丸二年を迎える。
サッカー部の練習が終わるのは、私が入っている吹奏楽部の練習が終わる30分後。
だから、私がサッカー部の練習を見ていられるのは移動時間を省くと大体10分くらいだろうか。
たった、10分。でも、2年も、となれば…結構な情報が入ってくるもんだ。
一年の時、一際小さな体で誰よりも機敏に動き回る姿に目を奪われてから、彼の成長を毎日のように観察してきた。
先輩たちに突進しては、フィジカルの差に弾き飛ばされていた彼、一ノ瀬太一は、今では身長も伸びて、チームの主力選手となっている。
コートの端で声出ししかさせてもらえなかったあの時も、
初めてゼッケンをもらって満面の笑みを浮かべていたあの時も、
怪我をしてしまったあの時も、
君が決めたシュートの数々だって、私はこのバスの停留所から見守ってきた。
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