AIが侵略する、乙女のiPhone

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AIが侵略する、乙女のiPhone

 古今東西、自分の力が及ばないものに対して私たちは未知なる力を借りようとする。  それは、「占い」  毎朝のニューズ番組の占いから、血液型占い、高架下の易者にちょっと敷居が高い占いのお店、誰しもが一度はやったことがあるはず。  とりわけ、恋愛などの自分がどうしようもできない相手の気持ちに関することに関しては、消しゴムに好きな人の名前を書いて使い切ると結ばれる的なおまじないや、ネットにごまんとある相性占いをやった経験はないだろうか。私はある。  恋愛空回り系乙女な私にとって占いは蜘蛛の糸のように絶体絶命の時の命綱でもある。 「彼とうまく行きますか?」 「彼から連絡が来ますか?」 「彼のことを諦めた方がいいですか?」  しかし、ネットのタロットは何かしらのアルゴリズムが組まれていて、私の念も、監修者の念も差ほど影響を及ばさず、決められたルールに則りカードを表示し、決められたカードの説明文を読み上げるだけなのだ。    当時、私が熱を上げていた彼の名前は「てお」といった。一応偽名だが、珍しい名前で中々一髪で変換することが難しい名前である。何度か変換を繰り返し、iPhoneはテオくんの名前を一髪で変換することができる様になった。これは私がよく使う言葉をAIが学習し、予測変換としてだしてくれるからである。  そもそも、AIの発展は目覚ましい発展を日々遂げている。私が初めてiPhoneを持ったのは高校生の頃、3Gと呼ばれる端末の角が丸く厚みのある個体であった時代だった。AIだの人工知能だのイロモノとして見られがちであったが、囲碁でAIが達人に勝った一件から周囲のAIに対する考え方と期待は一変した。  現在私たちの生活にはあらゆるAI(機械学習)が組み込まれており、一見なんでもないAmazonの商品ページも購入商品から類似のユーザが購入した別商品を私たちにリコメンドする形で表示している。  知らず知らず、「あの商品がいいんだよね」って思うのは潜在意識下で商品の刷り込みが行われており、購入までの道筋を作られている、ということがある(これはマーケティングによくある話)  そして私たちが今や肌身離さず持つ様になったスマートフォンもこれに漏れず、より便利な使い心地を提供するためにAIが組み込まれているのだ。  私はよくわからないアルゴリズムで出されるタロットより、ある程度の統計学に基づいた姓名診断や四柱推命を好む。だが、当時テオくんの誕生日を聞くことを乙女が恥ずかしがり、できないでいた。  そのため、私はありとあらゆる姓名診断サイトに自分とテオくんの名前を入れ、相性を占うアラサーの姿はAIから見ても恐怖、または好奇の対象になり得るかもしれない。  そんなある日、友達にLINEで「私はーーーーて思うんだよね」と打とうとした時に気づいた。私のiPhoneのは予測変換第一位にテオくんの本名をあげてくるようになっていたのだ。 「ーーーー(テオくんの本名)もうんだよね」と変換されてしまうのだ。   iPhoneには学習した予測変換を初期状態にする機能がある。けど、それをしてしまったら私と今までの変換学習期間や、テオくんと打った私の思いもリセットしてしまうのかと思い、内なる乙女は初期リセットに躊躇し、テオくんと変換されるiPhoneを使い続けることにした。  月日が経ち、テオくんの名前が出なくなったころ、私は次の恋愛に向かっていることに気づくのだろう。
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