ゴキ男さん

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ゴキ男さん

1年付き合った彼女にノリがアホという理由でフラれた俺は神在島に傷心旅行に来ていた。宿泊した旅館は名ばかりの築年数がかなり経つ民宿のような外観だ。そんなことはどうだっていい。問題は……。 いま部屋のベッドに人間サイズのゴキが居る。一度廊下へ出て俺は部屋番号を確認した。5〇キ号室、確かに受付のオバちゃんに言われたルームナンバーに間違いはない。 デーンと腹を出し横たわった姿勢で本を読んでいる。タイトルは、神在島浪漫譚。確か、心中相手との日々を描いた自伝で作者は、一之瀬シロ。俺も読んだことがあるが、コイツに人間の心情が理解できるのだろうか。て、よくよく見ると共感の嵐と言わんばかりに涙を流している。 なんだろう、もう傷ごころは癒えました、というよりどうでもよくなりました。好奇心には勝てません。ちょっと話し掛けてみることにしよう。
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