14人が本棚に入れています
本棚に追加
龍神祭
「女なんつー生きもんは掃いて捨てるほどいる。フラれたら次、フラれたら次、その精神でいい。あいつらの気分にいちいち付き合ってちゃあ精神が幾らあっても足りないぞこわっぱ」
「ゴキ男さん女のことようわかってますね~」
「当たり前だ。こう見えても若い頃はイケてた口だぞ」
「え?そ、その容姿で?」
「勉、それは失礼ってもんだ」
「すみません。因みに達観しているゴキ男さんでも忘れられない恋とかってなかったんすか?俺、ゴキ男さんに逢って壮絶にどうでもよくなってきてますけど、元カノのこと若干まだ引き摺ってたりします」
「そうだな、そりゃあ忘れられない恋ぐらいはある。恋と呼べるものなのか、一回ぽっちりの出逢いだったからな……。あれはゴキ子とのワンナイトだった」
「ウゲッ――」
「お前、さっきから失礼にもほどがあるぞ!人前で急に吐きやがるとは」
「す、すみません。ちょっと想像してしまってっ」
「馬鹿野郎、ゴキ子をそんじょそこらのゴキブリと一緒にするんじゃねぇよ」
「ち、違いがあるんすか?あいつらに?」
「お前、スマホもってるだろ?」
「は、はい」
「ならタマムシって入れてググッてみろ。ゴキ子はな、まさに虹色に輝くタマムシのように美しかった」
「……いや、形は一緒っすけど。て、よくよく見てたらタマムシもゴキブリに見えてきたっす」
俺がその後ゴキ男さんにあのゴキ茶色の腕でアームロックを掛けられたのは言うまでもなく。話しは可笑しな方向に進み――。
最初のコメントを投稿しよう!