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龍神様
『え~、時姫神社の由来は、時を司る神、時姫が人間に恋をするところから始まります。神と人とでは身分から存在性からなにもかもが違い、誰からも受け入れて貰えませんでした。ですが二人は恋心を断ち切れず、いつしか隠れて愛を育むようになりました。そんな二人を突然の死が引き裂きます。青年の死に時姫は三日三晩泣き続けました。そしてふと思い立ちます。時姫様は自らの力、時を遡る力を用いて彼を救おうと。しかしその結果、自らの力を、命を失ってしまい――』
鳥居を潜った先の出店が並ぶ神社の境内で声高に語っているのは町役場の広報担当者だろうか。ガヤガヤと祭を楽しむ人?が立ち止っては聞き耳を立てている。
「へ~、そんな謂れが時姫神社にはあったんすね。って、そんなことよりも、ゴキ男さん、や、や、ヤバいっすよ。どうして眼前の光景見て平然としていられるんすか?」
「何がだ!至って普通だろ?」
「馬鹿ゴキ、何処に目え付けやがんだ!?」
「お前やっぱちょいちょい失礼だぞ」
もうこのさい失礼で結構。正気か?バケモンしか居ねえじゃねぇかよ。
いま俺の目の前にいる奴なんて、煌々とした白装束に黄金に輝く輪っかが頭上に浮遊している人間が妄想の中で描く神様のリアル像その人だし、出店で焼き鳥買ってる奴は上半身がほぼ鶏、下半身だけ人間のような足があって、って、それ共食いですけどって凄く言いたい。
しかもアイツ、アイツは何者んすか?
オデコに天冠を付けて、背中には矢が刺さった……落武者?鎧が無駄に立派なのは名のある武将様?
しかも鎧にでっかくイニシャル入ってるんすけど。N.Oって、このお洒落さんってツッコまれたいオーラが半端ない。まさかと思うけど信長さんでは――しかもしかも信長さんの右にいるアイツ、絶対にリアルガチゾンビですよね?
「勉、ギャーギャーうるさいぞ!これだから若いモンは、人を見た眼で判断するな」
するよ、馬鹿ゴキが!しない方がこの状況でおか――。
そう言えばこのゴキ男さんもバケモンの類だった。普通にスルーしてたけど、何処の世界に人間サイズのゴキブリが居るんだ。しかもせっかく6本も足があるのに2本で歩く無駄な生態。
「人ってもんはな心で判断するもんよ」
「そう……すね。そんな気がしてきました」
「だろ、判ればいいんだ」
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