サークル参加

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サークル参加

 ネットや映画などで心霊スポット、事故物件が話題になっている昨今、 オカルト好きである私もそういったものに大変興味があった。  幽霊や妖怪、ポルターガイスト、心霊写真そういったキーワードを動画サイトで検索しては仕事の休み時間や休日などに見漁り、新作ホラー映画が上映されれば公開日初日に友人と共に観に行くくらいである。  私と同じくオカルト好きということから仲良くなった友人、田上とは大学入学前のオリエンテーション時に隣の席になったことがきっかけで話すようになり、お互いオカルト好きということを知ってからは話のほとんどがオカルト中心になっていった。 大学に入学して半年弱が経った頃、田上が心霊ツアーに行かないかと誘ってきた。 「さっきトイレで聞いたんだよ、部活棟の3階奥にオカルトのサークルがあるんだってよ!」 田上は濡れた手を振りながらこちらへ歩いてきた。 トイレで同じゼミの金森が友人達と話していたのを聞いたらしい。 私は学食へ移動しながら田上から詳しい話を聞いてみた。 「今度の休みにオカルトサークルが心霊ツアーに行くんだってよ! それが今回はサークルに入ってなくても参加できるって!」 サークルに入っていなくても参加できる活動なんてあるのか。 面白そうだしせっかくなら参加してみるか、と私と田上はそれに参加することにした。 参加届けや連絡先の交換など面倒なことはすべて田上が済ませてくれた。 当日は大学前に集合で、それぞれ何人かに分かれて車で心霊スポットをまわるらしい。 けっこうな人数が参加したのだろう。  私と田上は、オカルト研究会3年の坂本さんと神田さん、田上にこの話しをした金森の5人で行くことになった。 運転は坂本さんがしてくれるらしい。 全員が車に乗り込むと、助手席に座った神田さんが後ろを向いて少し身を乗り出しながら今回の参加理由について聞き始めた。 「君たちはなんで今回これに参加しようと思ったの?」 「俺たち心霊とかオカルト大好きなんです!  この話を金森から聞いて絶対参加しようって」 田上が少し興奮気味に体を前に乗り出してそう答えた後、そうだよな、と私の方を向いた。 「はい、こういうのに興味があったので。  今回はサークルに入ってなくても参加できると聞いて参加しました」  金森は別の車に乗った友人から話を聞いて参加したらしい。 田上同様、少し興奮した様子の金森は外の様子をチラチラ見ながら神田さんにこれから向かう心霊スポットについて聞いた。 「今日は2か所行こうと思っているよ。廃校と廃村。  この2か所は距離が近いから」  トンネルとかそういうところへ行くのだろうと思っていたが、いきなり廃校と廃村。 オカルト好きとはいえ実際にそういう場所へ行ったことがない私は驚きと緊張でつい体に力が入った。私と金森に挟まれるように真ん中に座っていた田上も廃校と廃村と聞き、少し怖くなったのかもしれない。先ほどまで前のめりで話をしていたのに座席に深く腰掛けなおしていた。 「マジですか!すげー!  俺、トンネルとかダムとかそういうところへ行くんだと思っていましたよ」 私達とは対照的に、先ほどよりも興奮した状態の金森が助手席の神田さんへ顔を近づけた。金森が想像以上に乗り気だったことに神田さんと坂本さんはとてもうれしそうだった。 「そんなに楽しみにしてもらえるなんて嬉しいよ!  今回行く場所はサークル内でも賛否が分かれた場所だからさ」 神田さん達のこのやり取りを聞いて、 この心霊ツアーに参加するのは間違っていたのかもしれない、と思った。 私も田上もオカルト好きだが、これは私たちが思っていた心霊ツアーではないのかもしれない。 インターネットやテレビで見たダムの周りやトンネル歩いたりするような、ゆるい心霊ツアーを想像していた私はこの時点で自分たちの間違いに気づいてしまった。 帰りたい……。 今更引き返せない私は、手を少し強くにぎり窓の外を眺めることしかできなかった。
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