第八話

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第八話

 俺たちは二つの皿をもっていきました。 「ほう?これがクリスマスケーキか?」 「これは、ブッシュドノエルといって木の切り株、諸説はいろいろありますが、キリストが降りてくるこの日、一日火を燃やし続け、その灰はキリストの代わりとして一年大事にされるそうです、これはフランスという国のお菓子になります」 「甘いな」 「だいぶ甘さは抑えてありますが、少しにしましょう」 「すまぬな」 「女性はお好きでしょうから、どうぞ」 「うわー、おいしそう」 クオリティータカ、ねえ君いくつ? 十五中三です。 買ってきたんじゃないの? へへへ、これだけは毎年母ちゃんと作ってたんだ、十年以上作ってきたんだ年季が違うからな。 失礼しました。 「もう一つは何だ?」 「こちらはシュトレインという、ドイツのお菓子ですが、俺はあまり好きじゃなかったんですが、魔王様が好きかなと思って、フルーツをたっぷり使ったケーキになります」 「果物か?」と少し残念そう。 「はい、ですが、試してください、お好きなはずですよ」 フーと大きなため息。 でも次には皿を持ち上げ香りを嗅いでいる。 「おい、隼人、これは酒ではないか?」 「はい、たっぷりのブランデーに付けたフルーツを使いました」 「これは、砂糖の甘味ではない、ブドウ、チェリー、なんだかいっぱいの甘味が酒に合うな」 良かったー。 「これはいい、ヒロム、ミノルにこれに会う酒を持ってこさせろ」 「かしこまりました」 俺が席を離れた間、隼人は魔王様にあるお願いをしていたんだ。 「かまわぬが、ヒロムが戻って来てからだな」 「失礼します、こちらでおつくりしてもよろしいでしょうか?」 「ああよい、ヒロム、隼人が明日こあっぱどもと、クリスマスパーティーなるものをしたいそうだ、どうだ?」 兄ちゃんはダメだって、忙しい時に抜けられるのは困るんだってさ。 シュンとした隼人。 「何とかならんのか?」 俺に振るんですか? 「朝だけなら何とかなるんじゃあねえか?」 「あさ?早すぎるよ?」 バーカ、向こうじゃ昼だ。 あ、そうだった。ねえ、四人だけ、頼めないかな? なんでだ?向こうの子とすればいいじゃないか? バーカ、中三にもなって、クリパなんかやっても誰も来ねえよ。 そうなのか? そういうもんなの、二時間、嫌三時間でいいからさ。 「いいんじゃないか?」 「はー、ミノルさんに感謝しろ」 「ありがとう、魔王様もありがとうございます」 「わかったから、これ、お代わり」 「はい!」 「叔父様食べすぎですよ」 「ははは、甘未は別腹、なあ隼人」 その後、あの女人は魔王様のこれ?と小指をあげた隼人に、いとこだよ、叔父さんて言ってただろ?というと、なーんだ残念と言いやがった。 そして、最初からいてくれた四人に招待状を渡し、お腹を空かしておいてね後言って帰った隼人だった。 四人には、すまないけど、付き合ってやってほしいというと喜んでいた。 子鬼たちが中を覗いています。 彼らにしてみたら外の世界、未知の世界なのです。 家から出ないことを約束させられてはいますが…。 「いいのかな?」 「いいんだろ?」 大将は手を合わせ、お願いといって行っていたけど、隼人はいい子だけどさ。 早く行けよと、ジジが押します。 それなら先に行ってよと押しました。 「お、鬼っ子、どうした?」 「あ、よしとだ」 「義人だ」 「さっさと来い、待ってるぞ」 鬼っ子たちは意を決して日本国に第一歩をしるしたのです。 「こっちだよ」 義人の方へと行きます。 キョロ、キョロと見たことのない物があるなと思いながら。 パン、パン。 何かが飛んできた。 「キャー」 「うわー」 「メリークリスマス!」 大きな音と、飛んできたものに驚く四人。 「ようこそ、座って、座って」 隼人の隣には義人も座っています。 低いテーブルの上には、いっぱい料理が並んでいます。 そして中央には、大きなデコレーションケーキ。 「この後仕事だって聞いてるから、ジュースだけど、乾杯しよう」 そして隼人は、ジュースを継ぎながら、こう言ったそうです。 いつも叔父さんを助けてくれてありがとうって。 隼人が自分で作った料理です、四人に食べてほしくてふるまったのです。 泣けるねー。 いい子じゃねえか。 心配してたけど、すぐに打ち解けた子鬼たち。 初めてのパーティーなるものは、飲んで食って、ゲームして、盛り上がったそうだ。 そして、ディナータイム。 むっとしているお方。 お酒を注ぎながら、いかがいたしましたかと尋ねてみた。 すると魔王様、隼人のパーティーに行けばよかったといったのです。 目の前にならべた料理を見てため息? お気に召しませんか? 本日のメニュー。 ぶり大根。天丼。お肉は、キングスネークのから揚げです。 すると、本日のおつき、マーキュリーさんが俺の隣に来ると、隼人たちがしたパーティー。 それがどうした? 写真なるものを見せてもらったそうだ。 それが? 期待するだろう? 期待ですか? すると魔王様は写真を見て、目の前の料理を見てはため息を吐いた。 ん? 魔王様よろしければ写真を見せていただいてもよろしいですか? ああ、といいながら、目の前に並んだ食事を食べ始めた。 満面の笑み、いい写真だ、みんなが入っている。 「ここですよ、ここ」 と横から指さすマーキュリーさん。 これが何か? 何かじゃなくて、料理ですよ、テーブルの上いっぱいでうらやましいと思われたんですよ。 「ハハハ、そりゃ六人分だもの、テーブルいっぱいになりますよ」 魔王様はそれでも口をとがらせて、われもこれを食べたいと言われたのです。 んー、今からはちょっと無理ですね。 なぜだ? 材料の問題、それと、今日、向こうはお祭り騒ぎで、どの家庭も似たようなものを食べているので食材が手に入りにくい話をしたんだ。 それに時間もかかるしな。 そうか、と残念そう。 「では明日にいたしましょうか?」 「できるのか?」とまるで子供のように目を輝かせています。 できますけどパーティーメニューですよ? 「そのパーティーとやらはどんなものなどだ?天丼お代わり」 おかわりするのね? 「んー、魔王様もなさいますよね」 「そうなのか?」 さあ?と首を振るマーキュリーさんです。 あれ?ダンスパーティーをなさいましたよね? ダンスパーティーとは何だ? 「あーすみません、えっと、社交なんっていったかな?ほら、エ~と若い子たちが来て魔王様にあいさつした時」 「ああ、デビュダントか、それがどうした?」 「あれ、舞踏会ですよね音楽に合わせて踊る」 「あー、そうですね、それがパーティーなのですか?」 そうですね?大勢の人が集まって食事や会話を楽しむことで、祭りや記念日などに行われるのが一般的ですね。 「ふむ、だがこっちでは食事をすることはないな?」 「そうですね、せいぜい、お茶を飲むか、上のものが別室で少人数で酒を飲むぐらいですね」 あの時はお酒だけだったので、おつまみを出させていただきましたが。本来集まられた方も、片手でつまめる食事とお酒を楽しむのもありなんですよ。 それと女性が好きなお菓子とお茶だけを楽しむお茶会もパーティーの一つです。 「新年にご親族が集まられる、これは毎年の事と伺いました、これも立派なパーティーです」 「ああ、その日は、ものすごい料理の数だそうですね」 一応、メニューは、出させていただきましたけどね。 「集まればパーティーとなるというのだな」 そうですね。 「んー、だが食べてみたいのだ?」 わがまま。 「何か言ったか?」 いいえ、では明日やってみます、もしも余ったら、七人衆で片づけてもらいますからね。 「それは嬉しい」 魔王様は、マーキュリーさんをにらんだ。 「失礼」 「魔王様、パーティーは楽しみでもあります、そうそう何度もすると楽しみが半減しますしね、お一人でもよろしいですが、たまには皆さんとでもよろしいんじゃないですか?」 「だってー、もういい、隼人に頼む!ごちそうさま!」 そういうと席を立たれました。 「あーあ、いっちゃった」 「いいのですか?」 かまいません、それなりのものを作りますよ、残ったら手伝ってくださいね。 彼は、笑いながらもちろんですと言われ、空になった大きな器を見て笑っておられました。 そして。 「なー、ひどいとは思わぬか?」 「まあ、兄ちゃんが言うこともわかるんだけどな」 どうぞと出された缶ビール、プシュッと開けてごくごくと飲んだ。 「プハー、この頃冷たいのだ」 「兄ちゃん?」 なんでかな? 「この間もな?」 ハンバーグが小さいから大きなのにしてくれといったら、小さいものが山になって出てきたのだ。 「あーそれは中まで火が通らないから、せいぜい大きくても限度があるよ」 そうなのか?と口をとがらせ、ポテチを食べている。 「魔王様もさ、年末で忙しいとは思うけど、魔物退治に行ってる?」 「いや、今は無理だな」 「だろ?いい肉が手に入らないんだ、兄ちゃんたちもいろいろ考えていると思うよ?狩人の肉は民のためのものだろ?城の中は、魔王様がいてこそおいしいものが食べられる特権だもんね」 特権か、そうか、そうだな。 「隼人、終わってしまったぞ」 「ハエ―な、つまみになるようなのは―、んーせんべいでも食うか?」 振り返ると、魔王は玄関の方を見ている。 「どうかしたの?」 「外に何か、オル」 外? そういえば一昨日帰ってきた姉ちゃんが何かいるって結界はっておくって言ってた。 「結界?ふむ」 魔王様は立ち上がると玄関まで行った。 玄関がパンと音を立て開いたかと思うと、魔王様は指をパチンと鳴らしたんだ。 「ふっ、われの力におののき逃げたか、雑魚が」 やべー、なんで魔王がいるんだよー、死ぬか思った。 とにかく知らせないと。 「魔王様?」 「何でもない、ビールもう一本と草加せんべいでいいぞ」 わかったよ、こっちでどうぞ。  ハッ、ハッ、ハッ。  黒塗りの車、その脇に立つ男二人。一人は、男に火を差し出すと、一人は煙草を吸い始めた。 「いた、王子~」  手を振ってくる男。 「どうした?」 「ハア、ハア、魔王が、魔王が現れた!」  王子と呼ばれた男は、クックックと笑いながら、空を仰いだ。  俺殺されるかと思ったよという若い男。 「お帰りになられるのですか?」 「一度な、姉上の驚く顔が見たいのだ、怒りで震えるあの顔をな」 クックックッ。 「ですが魔王が出て来たのであれば、大丈夫でしょうか?」 「チャンスは、少ないがな、穴は穴だ、ふさがねばこっちへ来ることさえもできん」 「ですがそう簡単に」 「そう何度も穴が開くことはないのだ、せっかく開けてくれたのだ、使わないことは無かろう、こっちの世界で荒稼ぎをしていたのも、たかが数十年で消える星に送られた私の怒りを、あの女に―」 火の付いたたばこをもみ消した。 「さて帰り支度でもしよう、すぐに戻ってくる、フッ、あの星を消して、この星にわが城を築くだけだ」 「王子の意のままに」 「意のままに」 「今に見ておれ、神の世界など、闇に変えてやるわ!」
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