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第十話
俺たちは、普通に夕飯の準備をしていた。
そこに内線。
お客様、スペシャルコースを頼みたいと言われた。
何人ですか?
三名だと言う。
わかりましたと電話を置いた。
「お客様です、三名様追加、スペシャルコースに切り替えます」
「はいよ」
「ベーネ!」
「またもや、愚弟が、申し訳ない」
「いやーね、家の大事なのが狙われていたからこそ、気が付いただけで、まだ何もしかけてきてはいないんですよ、その時は我々も仕掛けようとは思うのですがね」
「いや、今の話、私どもの方でお受けしたいと思う」
「そうですか、ではお願いいたすとしよう、おい」
「はい、では、お食事をなさりながら、向こうの様子を見ていただく事に致しましょう、皆さま食堂の方へ」
「なんだここは?」
「ここは、居酒屋にございます、城の中だけではなく、平民たち誰でも王と同じ食事ができると、今やこれほどの人が押しかけてきております」
「すごいな」
「こちらにございます」
「失礼いたします」
「本日のご夕食にございます」
「食前酒です、お酒は大丈夫ですか?」
「ああ」
「甘めのスパークリングワインにございます」
皆さんに注いで回ります。
「それでは、ゼウスとの久しぶりの再会に、乾杯」
乾杯。
「おいしい」
「前菜にございます」
「今日は、イタリアンではないのか?」
「元々、フレンチの元祖はイタリアンと言われています、今日はいい食材が入りましたので少し思考を代えさせていただきました」
「プリンのように見えるな?」
「こちらは、ロックバードのレバーパテと肉のムースです、そのままでもいいですが、こちらのチーズのせんべい、クラッカーに乗せてお召し上がりになってもおいしいです」
「手でいいのか?」
「どうぞ」
カリッ。
サクッ。
「おいしい」
「これは酒の当てにいいですな」
王妃様は、王様と息子の王子様をお連れになったのです。若い王子様、いっぱい食べてくれ。
「野菜スープにございます」
「ロックバードのから揚げです、骨がついておりますので、手でどうぞ」
「こちらに水がございます、指を洗い、これで拭いてください、汚れたのはすぐに交換いたします」
「すまぬ」
王子様は魔王様を見ながら、肉に手をのばされました。
「はふ、はふ、熱い、これは、んー、口が熱い、うまい」
「うまいか、たくさん食べてくれ」
「はい!」
「王様、〆はいかがいたしましょうか?」
「今日は何がある?」
「麺類と茶漬けになりますが」
「そうだな、鍋焼きがいいな」
「かしこまりました」
「魔王様、鍋を食べるのですか?」
「いや、いや、まあ出てきてからの楽しみにしてくれ」
「こちらは入れ物が大変熱くなっております、お気お付け下さい、食べ方は、この蓮華に、木のフォークですくい取り、フウ、フウと息をかけ冷ましながらお召し上がりいただきます」
皆さんの前に一人前の土鍋が置かれました。
一斉にオープンです。
「おー」
鍋焼きうどんです。
「音を気にせず、ずるずると食べてくれ」
魔王様は、箸をつかえるようになられました。
魔王様は二人前ですが入れ物が同じなので大丈夫でしょう。
さて食事が終わり、お茶とデザートです。
「ヒロム、準備をしてくれ」
「かしこまりました」
魔王様は、食事は終わり、これから、このヒロムの住んでいる一帯を見せると言われました。
スクリーンには、所沢の町が映し出されています。
「今、向こうの世界は夜、これは今の向こうの様子だ」
「明るいですな」
「電気というもので暗い夜道も明るいそうだ、ではここからは、昨日までの昼の様子を見てほしい」
「ハレル殿で間違いはないか?」
「…はい、ありがとう存じます」
「父上、ちょっと」
「ん?」
こそこそ二人が何か話しています。
「え?本当か?」
「間違いでなければ…」
すまぬと手をあげられた王様、そばへ。
「いかがいたしましたか?」
「今の映像とやらは昨日までの過去の物だと言われたな」
「はい、そうですが」
「もう一度見ることはできるか?」
「はい、何度でも、言っていただければ止めることもできます」
では、ハレル様が最初に見えたあたりから見せてはくれぬか?
かしこまりましたと、その映像をもう一度お見せしました。
「止めて!あー」
「行きすぎましたか?戻しますよ」
コマ送りで戻します。
「そこです、そこ!」
王子は立ちあがり、この男は、黄泉の者ではないですかといったんだ。
ガタンと音をたてたのは王妃だ。
「ヒロム、大きくできぬか?」
「やってみます」
サングラスをかけたスーツ姿の男だ。
「魔王様プリントアウトいたしますか?」
「ああしてくれ、それとネプラスを呼べ」
「内線して」
「はい」
俺は部屋を出て、家の方へ、プリンターから出て来たのを持って走った。
「こちらです」
「これか?」
「たぶん」
「なぜそう思った」
「思ったのではございません、叔父上が牢を破った時、数名の罪人が飛び出したと聞き、それを聞きました」
「魔王様!」
「聞いたか?」
「はい、すぐに」
「ネプラスさん、これです」
「すまぬ、誰かおらぬか!」
その頃。
「なんだ?」
叔父きがプリンターから何か取り出し、走って行った。
なんだかな?
ピンポーン。
誰だ?こんな時間に。
「はーい」
義人は、玄関の側にあるモニターをのぞきました。
着物姿の男性です。
「はい、どちら様ですか?」
「夜分恐れ入ります、私、こういうものにございます、こちらに来れば、魔王様とのつなぎをしていただけると聞き、参上いたしました」
名刺を玄関から差し込んでもらい、それを持って走って行った。
「魔王様に、お客様です」
マーズさんに銀のお盆に乗せた名刺を見せた。
「むこうも気が付いたようですね、お通しして」
「かしこまりました」
「失礼いたします」
俺は走って行くと、いきさつをだいたい話、今、王妃たちが来ている話をした。
「ありがとうございます、これで話がしやすくなりました」
そう言って、彼は呼ばれるまで、ドアの前で待ちました。
「近藤殿お入りください」
「失礼いたします」
俺の方にも頭を下げていった。
「なにがおきてる?」
「大変なことが起きたよ」
俺は二人にもかいつまんで話した。
店は終わったが、魔王たちはまだ話しをしていた。
「こっちは俺が」
「電車も無くなるし、帰るわ」
「仕入れ、頼むな」
「はい、お休みなさい」
ファックス流しておかないと。
ドアが開いた。
「ではすぐに支度を」
「では私はこれにて」
「ヒロム、お送りして」
「はい」
着物姿の方は、電車があるので帰れますと言われました。
彼が出て行った後カギを閉め明かりを消しました。
まだ外では、彼らが見ているかもしれないと思いながら。
戻ると、マーズさんが、魔王様がお休みになったこと、それと、神の王妃様方は泊まっていただく事、明日の朝早く、もう一方の客が来るから、朝食を頼みたい話をされた。
開店前ですね?
それに王妃様たちも興奮しておられると思うので、朝が早いかもという話だ。
構わない、俺も店を閉め、家にかえったのだった。
朝、冬休みでまだ寝ている甥っ子たち。洗濯を頼むとメモパッドに書いてきた。
新聞を持って、店へ行き、コーヒーを入れ始めた。
ドンドンドン。
店側の新しいドアから叩く音。
もしかして昨日の?
ドアを開けた。
「おはようございます」
「人間?」
そこに立っておられたのは、着物姿の男性三人。一人は扇で口元を隠していらっしゃいます。
「ここは魔王の店で良いのか?」
「はい、お話は聞いております、中へどうぞ」
着物だし、座敷の方がいいかな?
窓辺に作った座敷は背が低い方が使いやすいかと思い作った。案外、このんで使ってくれる人が多くて、よかったよ。
「お好きな所へおかけください、今、お飲み物をお持ちいたします」
「ああ、ちょっと」
はい?
この香り、もしや、コーヒーというものか?
そうです。
ではそれをもらえないかと言われました。
かしこまりました。
彼らはおひとりが座敷へ、二人はそばのテーブルへ着きました。
扇で口を隠していた方、あの方が王様だな?
彼らはテーブルに置かれたメニューをのぞいておいでです。
そこへひょこっと顔を出したのは王子様だ。
「おはようございます、よく眠れましたか?」
「ああ、ん?」
「ご存知ですか?」
「いいえ?」
「では、ご一緒に、挨拶だけでもしませんか?」
「はい」
俺はコーヒーを持って行き、王子を彼と引き合わせた。
「そうか、大きくなられた」
「このような場所でお会いできて光栄にございます」
うん、うん。
「では王子様、朝食はいかがいたしますか?」
「父上も降りてくる、それから頼む、それと、私もこの香りの物が飲んでみたい」
「かしこまりました」
彼は、厨房がのぞける席へと疲れました。
さほど離れることなく。
「おはようさん」
「おはようございます」シンさんが来た。気になって早く来たと言う。
朝食三人分お願いした。
「王子様、こちらがコーヒーというものにございます、苦みがありますので、砂糖、こちらはミルクが入っておりますので、お好きにいれて味を調節なさってください」
「ありがとう」
俺は、黄泉の王の側へ。
「いかがでしょう、軽い朝食を準備いたしましょうか?」
「そうだな、頼めるか」
「かしこまりました」
「追加、三人分」
「はいよ」
俺はその間に内線。
「おはようございます」
お客様が起きて朝食を作っている話をした。
わかりましたと電話が切れた。
すると後ろに気配。
振り向くと黄泉の王。
「それはなんじゃ?」
「電話と申しまして、私どもは魔法が使えませんので、他の部屋にいる人と会話をするものです」
ほう?
「これはなんじゃ?」
「新聞、昨日の向こうでの出来事や、地域の事が書かれた物にございます」
「ほう、見てもよいか?」
「ええ、かまいません」
彼は席へ持って行くと新聞を読み始めた、言葉分かるんだろうな?
しばらくすると、ミノルも出勤。神の王御夫婦も来られ、彼らはすぐに黄泉の王へ挨拶をしておられた。
そして、皆さまに朝食をお出しすると、魔王様が登場された。
彼はよい、よいと席に着かせ、まっすぐ黄泉の王の前に座った。
「あないをもらったのに、すぐに顔を合わせる羽目になるとはの?」
「我はこの星を守りたい、それだけだ」
「フン、それと地球という星もであろう?たかだか数年ではないか?」
「ああ、だからすっかり忘れていたのだ、同じような事があったことをな」
「だがあの時の星は?」
「…消えた」
「そうであったか」
魔王は、食事が済んだら、迎えをよこす、部屋をうつし、見てもらいたいものがあると言い残し立たれた。
俺は王様に朝食はどうなさいますかと尋ねると、いつもの時間で頼むと言われ、俺の方を振り向くと、こう言われた。
「応接室に、スムージーを頼む」
「かしこまりました」
シンさんがニヤニヤしながら、でっかいコップを一つと、普通のコップを七つ並べた。
俺たちもだが、はまると何故かそれが気に入ってしまう。
今魔王様のお気に入りは、野菜と果物のスムージーだ。
彼は案外甘いもの好きではないのだが、果物の甘みは好きで口にする。
姉ちゃんが肉ばかりではなく、野菜も食べろと俺たちに作ってくれたのを彼が試したところ、口にあったと言う所だ。
応接室に行くと準備をしている七人衆と、中央にどっかと座り指示を出している王様。
「おはようございます、皆さん休憩なさってください」
俺は大きな入れ物を持って王様に差し出した。
「ヒロム、31日、11時に穴を閉じる、家の中は、解体場の隣に借りに置く、終わり次第元に戻す」
「かしこまりました」
数十分後、開いたグラスを持ってきてくれたコメットさんが、食堂にいたお客様を応接室へと案内された。
さて、俺たちは、朝食の準備と、正月の準備だ。
門の外に張られた張り紙の前には多くの人が集まっています。
「残念、正月は休みか」
「正月ってなんだ?」
「新年の事だ、二日休みなんだと」
えー?
文字の読めない人もいるので、読める人が大きな声で読み上げています。
「つきましては、休みの間常温でも食べることのできる、お節料理なるものの販売をいたします、予約は、30日閉店まで。31日、昼12時から午後六時までの間で、引取りにお越しください。なお予約が無ければ販売いたしませんのであしからず」
予約ってなんだ?
ここに絵がついてる、大きさがいろいろあるからこれから選んで頼んでおくんだとよ。
その時金も持って来いって書いてある。
金だけとって、くれないのか?
違う、忘れないようにするために、金をとるんだとよ。
ふーん。
みんなは写真を食い入るように見ています。
住所もなければ、名前もない方もいらっしゃいます、そこでどうやって注文を受けるか、そこは、日本の誇る技術を使いましょう。
「はい、次の方、ここへ座ってくださいね」
「どれにいたしますか?」
その間に写真を撮らせていただきます。
「ではこれが受け取りヒョウです、無くさないでくださいね、これが無いと交換できませんからね」
「わかった」
「毎度ありがとうございます、交換もここで行います」
おせちは、俺たちが監修、作るのは、信頼がおける料理人がいる所だ。
一回目の注文は土産として使う分、三十。これだけは譲れずに頼んだ、後はふたを開けて見ないとわからないからね。
「隼人、注文数は?」
「今のところ五十だな、一番多いのが三人用」
「そうか、寒いけど頼むな、キキちゃん、大丈夫?」
「これ有る、平気」
カイロ、こっちの方もお気に入りです。
応接室での話が終わったようです、俺たちは後で聞くことになっています。
皆さんが帰られるようですが…。
「では楽しみにしておるぞ」
「まっておる」
「料理人、ちと頼みがある」
黄泉の王様。
それは、俺たちにしたらたわいのないこと。
「かしこまりました、ご準備させていただきます」
「ではな、後は頼むぞ」
「わかったよ」
皆さまが帰られました、黄泉様、コーヒーを所望、ご自分で入れることのできるドリップ式を頼まれていかれたのでした。
はー、終わった、朝飯、そうだ、ヒロム!
はい!
王様は、それを言うと、出ていかれました。
はー。
「どうした?」
「焼肉が食いたいんだと」
「今か?」
「めんどくせー」
何をめんどくさがってんだとシンさん。
煙とにおいがすごいから、三階の空き部屋でいいって言うんだ。
「ハハハ、若いんだ、がんばれ」
「笑い事じゃねえよ、あそこまで運ぶの大変なんだよー!」
上にも調理場がほしいって言うよりエレベーターが~欲しいよー!
めったに使わないから却下だってー。
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