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第四話
そして、次の日の朝。
「頼む、必ず払うから」
「いいけどさー、内緒ってどういうことだよ?」
とにかく来てくれたら、話すからと、幼馴染のダチの勤める工務店へ頼みに行った。
朝早くからごめんと、昼からは営業しなきゃいけないからそれまでに頼みたいと家の中へ引っ張って行った。
「なんだこの延長コードは?」
「電気が無いんだよ」
どういう事だよと、押し入れの中へ。
「へー、いい感じだな」
「そうか、ありがと、でもな、まずはこれ」
「は?なんだこれ?水、駄々もれ?」
いっぱい並んだ鍋、バケツには水がいっぱいです。
これさ、止めることが出来ないんだ、水道じゃないから、流れっぱなしなんだけど、こっちに引き込めるか?とシンクを指さしました。
「蛇口なしでいいのか?」
「ああ、ホースでも何でもいい」
「塩ビ管の方がいいかもな」
それと下水なんだけど、排水も垂れ流しでいいんだ、ここもホースで、ちょっと来て。
ドアを開けた。
「は?なんだここ、って林なんかあったか?」
「いいんだよ、これ見て、ここに流せるようにしてくれないか?」
「浄化槽か、ここでいいんだな」
浄化槽に見えるか、それならそれでいいや。
「うん、それとさ、プロパンガスなんだけど」
「穴開ければいいのか?」
頼む。
「でもこれ、石だよな」
厚さがかなりあると思うんだ。
そこは任せろ。
中に入って、電気なんだけど、家の中から引けないかな?
出来るけど、相当量になるぞ?
家電が使えればいんだ。
それくらいならいけるかな。
今日は延長コードで何とかするから、頼みます。
よし。
「アーそれともう一つ」
トイレなんだけど。
と家の中へ。
「もともとのつくりがさ、古いからこんなんでさ、できれば、少し広めの個室が二つと、男用一つ、できないかな?
「オー、それこそ任せろ、和式はもういいよな、洋式にしてやるよ」
必ず払うから、すぐにでも始めてほしい、それも昼までで終わらせてほしい話をした。
急ぎは?
中の上下水。
よし、と彼は材料を持ってくるとでていった。
甥っ子たちは学校へ行っていないから、俺は、彼に鍵を渡し、野菜と魚を仕入れに出かけた。
「まったく、今日は来るなってどういう事よ、また洗濯物たまってるからか?開けるの怖いわ」
一人の女性がやってきた。玄関のカギを開ける。
「なにこの線?」
延長コードが何本も押入れの中へと入っている。
そこをスルー。
キッチンへ行くと。
「何よこれ!まさかあいつ、これ店の物じゃない?」
段ボールに入れっぱなしの調理器具、テーブルの上には、一升炊けるジャーが二つ、スイッチが入っている。
そしてもう一つは保温器だ、開けると中にはビーフシチューの様な茶色い液体。
そして大きなボールには野菜がいっぱい入っている。
冷蔵庫を開けた。はっなにこれ?
冷気が回らないほど詰め込まれた物達。
家で店でもするんかい?
ピンポーん。
「はーい」
「毎度、小川酒店です」
パタパタ走って行くと酒屋さん、頼まれた物もってきたと言うので、どこに置きますかと言われ、玄関に置いてもらった。
ビールに日本酒、焼酎にジュース類。ワインにブランデーまで。
こんなにどうするんだろ?
認めお願いできますか?
ああはい。ハンコをポン。
毎度。
ご苦労様です。アイツは何をしようとしてるんだ?
「毎度、佐野工務店です」
「あら、ヨッシ―じゃない」
「あきねえ、なんだよ、まだ洗濯係か?」
「いいのよ、こっちは離婚して時間持て余してんだから」
「かわいい甥っ子の為ってか?」
「ねえ、何するの?」
「あれ?ヒロムに聞いてねえの?あいつ店やるんじゃねえの?」
店?どこで?
彼は、水道の事を頼まれていると、鍵を女性に返し、中へと入って行った。
「え?あれ?ここ新宿の?」
だよな、俺も見てそうじゃないかと思ったんだけどさ、こっち来てみろよ。
ドアを開けるとそこは、森の中?
「え?何ココ?」
「あいつは深く考えないでくれって、それと内緒って言われたけど、内緒じゃなくなっちまった」
彼はあちこち見て、作業をし始めた。
「ただいまー、ウワー、秋姉」
玄関に仁王立ちの女性。
「ヒロム、これはどういう事~?」
ちょっと来て。
俺は家の居間に引っ張ってきた。
彼女は、俺の姉、秋子。バツイチ、41歳子供はいない。
今から五年前、俺たちの姉、長女、春子と夫、信也さんは食材の仕入れ途中事故に会いかえらぬ人となった。
俺は別なところに勤めていたんだ。親父は十年前に行っちまったし。母ちゃんはもっと前に死んじまったからな、俺は姉ちゃんたちに育てられたようなもんだし。
二人でオヤジの店を継いでいたんだけど…。そういや―来年七回忌だな。
甥っ子の面倒を押し付けられたのは俺だった、仕方がなく実家へと戻ったのだが…。結婚を考えていた相手もいた、彼女の部屋に転がり込むように、甥っ子たちと女、そして店を掛け持ちしていたのだが…。その後、コロナウィルスのせいで、まあこんなふうになった。
姉の秋子も、あんな男じゃなかったのにと、何があったか定かではないが、まあ、女にもてる容姿の旦那は不倫をしていたと言うところだ。コロナが無かったら発覚しなかったのかもしれないのよねという姉は子供もなく十五年、バリバリに仕事をしてきたキャリアウーマンだったのだが、離婚を気に仕事も辞め、今は俺たちの面倒を見に来てくれる。
新宿の店で一緒に働いていたんだけどね、まあその辺は一番よく知っているわけよ。
「@@@@ま、魔王ってだまされてるんじゃないわよね?」
さっき見ただろ。あそこは地球じゃないから。
いや、いやありえないから。
別にいい、信じなくても、でも俺はあそこで仕事をもらったから。
「でもお金は?」
昨日これだけ前金でもらった。
九万八千円。
「ちょっと日本円じゃない、おかしいでしょ?」
ある人に頼んで換金してもらった、向こうの世界は金だよ。
「金?ゴールド?」
そう、こんな塊。
まじで?
マジ、アーそろそろ時間、今日は初めてでどれくらい人が来るか?
「よし、それじゃあ手伝うよ」
「いいよ」
「初日が感じん、酒来てるよ」
見たよ、それじゃ、中に運ぶ、手伝いがまだくるんだ。
そう?
そして、それはもう大変なことが起きるんだ。
「ヒロム、ピラフ大盛り二つ!」
「大盛りかよ!ルル、そっちは大丈夫?」
「はい、えーとおつりね、ありがと」
「大将、ピラフミッツです」
「はーい」
もういろんな動物のような格好の人が来て、メニュー、一種類だけで良かったよ。
シーフードピラフ、サラダ、コンソメスープのセット。
朝食だしね、十分だと思ったんだけど。
お金が無いから、金を重さで測ってもらっているんだ、偽物?今はそんなの考えられないよ。
「足りぬ!」
「今ステーキをお持ちしますから、先に食べないでくださいよ」
「いいではないか、それに酒もほしい」
「はい、はい、白でいいですか?」
「白とはなんだ?」
「ワインです」
「ワインが白いのか?」
「お持ちします、どんぶりで持ってきますから、待っててくださいね」
まったく、魔王様の方は大変だよ。
「キャー、なにこれ、何でこんなことになってんのよー!」
キャピキャピした子が来たぞ?
「いらっしゃい」
「あれ?あんたレレ?なにしてるの?」
緑の鬼は、そこで説明している。
「魔王様が?」
指差した。
「隣で?」
うん、うん。
俺はできたものを手に、隣の部屋へ。
「そこの物まちなさーい!」
まるでロリータ、ミニスカートの少女が現れた。
急いでいるんですけど?
「なによこれ?あんた、なにもの?」
俺は料理人、魔王様の専属料理人に昨日なった話をした。
「ドアを開けてくれないか?」
何で私が、と言いながらドアを開けるとかたまった。
「…ま、魔王様、これは失礼いたしました」
「ヴィーナスか、こいつはヒロム、ここで皆に飯を提供する運びとなった。頼むぞ」
「頼むぞって、こいつは何者?それに見慣れない物が出入りしてます!」
「いいではないか、ヒロム早く、ステーキというのをくれ」
俺は、昨日のイノシシの肉でステーキを出した、肉厚のTボーンステーキだ。
「ハフハフ、んーいい味だ、肉だけの味ではないこの味がいい」
「昨晩は、魔王様は味噌が気に入ってくださったので、その親戚のしょうゆを使いました」
「うん、うん、このパラパラののもいいな、油がうまい」
「ありがとうございます、これが白ワイン、私の国、甲州ワインです、どうぞ」
ゴクリ。
「んー、これはいい、おかわりだ」
ワインを注ぎました。魔王様用に大きなワイングラスなみなみですから、一本なんてあっという間に無くなります。
「肉をもう一枚喰いたい」
「かしこまりました」
「まだおったか」
まだとは?
昨日の事はジュピターに聞け。
ははー。
そして、やっと途切れた、ここで終わり!昼の準備。
「ふーん、そういう事か」
彼女は、昨日の来てくれた狐顔のジュピターさんに話を聞いていた。俺は彼に腕時計を渡すとうれしそうにしていた。
すまないが、婦人用の華奢な物だ、腕が細かったからね、子供用はさすがに避けたよ。
「お世話をかけますがよろしくお願いします」
「いいけどー、美味しいしー」彼女は、フォークを口に入れながら、今日の夜に出す、デザート、ロールケーキの空になった皿を眺めている。
「次からはお金取る」と子鬼です。
「わかってるわよ、さっきのだって、安いもの、でも魔王様がねー」
彼女は、まあいいわ、魔王様がそうおしゃるのなら私たちは逆らえないから、せいぜい励むのね。
そう言い残し、出ていきました。
そして。
「おい、お前、ここで何をしている?」
振り向くと、そこにいたのは黒鬼。
上から下まで真っ黒なのに、白いTシャツと半ズボンの薄茶色が浮いています。
ああ彼が昨日いなかった一人だなというのはすぐにわかりました。
彼には三人の子鬼を借りている話と魔王様に雇われた話をしました。
目を大きく見開いて、なんだって?と驚く人。
その声に、食器を重ねる音が止み、ジジ?
という声に三人が集まってきました。
彼らは彼らで、キーキーという甲高い声で話しています。
「肉を焼かずにこいつの手伝いをするだと?」
キーキーキー。
「代わりに魔王様と同じ食事ができる、ウソだろ!」
キーキーキーキー。
今日も俺たちは魔王様と同じものを食べたんだ。どうだと言わんばかりに胸を張る三人です。
それに着ている物もこぎれいです。
そんな事よりも、お昼の準備です。
お昼は何?
カツドンにする、まだ肉があるからね。
魔王様に肉を取ってきてもらわないといけないな。
「お前、今なんと!」
「肉だよ、いくらなんでも大勢来たら無くなるからな」
三人は、とにかく手伝えばいいのだと言う。彼らはまじめで、いい子だよ。
「あら、また一人増えたの?」
とはいってきた秋ねえは、俺と同じ、作務衣姿にエプロンをしています。
「あきねえ、彼はジジだそうだ」
「ジジさんね、よろしく、秋子です」
「ハウ、よ、よろしく」
あれ?真っ赤になったよこの子。
それじゃあ、夕方だけど昼と、夜の準備だ。
それから一週間、怒涛の毎日が繰り返されることになる。
魔王様の付き添いの人たちが、かわるがわる来るだけでそこから説明が始まるから大変なんだよなー。
それだけならいいけど、内装にもケチをつけてきた、まあこっちの世界のルールもあるからな、そこはゆうことを聞こう。
金は右から左へと、オープンして間もないからでていく金額も大きかったが、家賃が無いのと、水道代がタダなのには感謝だな、後、薪が使えるのもありがたかった。
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