第九話

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第九話

次の日、俺たちは、魔王様と七人衆に呼ばれた。その話が終わり皆さんの前に食事を出したところだ。 「ハウ、これがパーティー料理」 「すごいですねー」 「綺麗ですー」 手で持って食べられる小さなものを並べた。一度食べたことのある物も置かせていただいた。 魔王様の前だけは、鳥の丸焼き、中には茹で卵、ご飯が入っていて、かなりボリュームがあるものだ。 皆さんには切り分けたけどな。 ゆっくりたべてくれ。 さて話というのは。三つの種族の事についてだった。それだけではなかったんだけどな。 「堕天使というものを知っておるか?」 「名前だけは?」 「俺も」 「俺もそんなもんだ、それがどうかしたんですかい?」 この世界は、三つの種族で成り立っている話をしたな。 はい。 神と黄泉の星は、世界のありとあらゆることで均衡を取り合っている。 特に、自国を脅かさないと言う協定を結んでいる。 簡単に言うと戦争を仕向けないと言う掟があるのだそうだ。 「神の国の王、ゼウスは女神だ、その弟ハレルが、黄泉の国へ戦いを仕掛けたのが今から二百年前だ」 簡単に言えば、神の世界は天上界、俺たちが天国と言っている所とはちょっと違う。 神は生きている者達すべての頂点を牛耳っている物だと言う。そして黄泉、こっちは死者の世界。 ありとあらゆるものの死の世界がここにある。 そしてこの二つは、裏と表の関係でもある。 俺たちには、二つの事柄がいつも付きまとう。 右と左、上と下。 だが魔族はそのどちらにも属さない。 あいまいではあるがなくてはならないもの、ただ二つから見れば、中途半端で、半端物と呼ばれ、さげすまされているそうだ。 「いいのか?そんなこと聞いて?」 いいんじゃないの、向こうから話してるんだから? 静かに。 ハレルは黄泉に戦いを仕掛けたかったわけではない、姉、ゼウスの失脚を望んで仕掛けたのだ。 当時、ハレルは姉のやることなすこと、すべてが気に入らなくて、犯行を重ねていた。 反抗期だな? 腕を組んでいうシンさん。そうだね? ただ奴は、我等をないがしろにしたことで墓穴を掘り、この世界から追放されたのだ。 「墓穴?何をしたんだ?」 「まあ、あるものが忠告してくれてな、火種がこっちに向くのもかなわない、バカなことをしているのは身内にいないのか、ちゃんと調べろってな」 へー。 地球という星は、彼らの星からは一番遠いわけではないが、結構な距離があるそうだ。 一番近い星は、三つの力からが崩れただけで崩壊するほどの力があるのだそうだ。 昔から繰り返されてきて、彼らの星の側にはほとんど星が無くなってきてしまった。 もし、大きな戦いが起これば、今度は自分の星がダメになる、だから協定を結んだと言う。 そしてその力は、遠い星にも影響が出る。 俺たちの星では、恐竜がいなくなった時、あの時は、近くの星が二つ消えたそうだ。 そして、ハレルがおこした戦いは、世界中を巻き込んだ戦いへと連鎖した。 「まさか?」 「今起きてる戦争は?」 「世界中を巻き込む?」 まだ何とも言えない、小さな戦いは、彼らにしてみたら些細なことでしかなく、遠くの小さな星の心配までしていられないと言うの本音ではある。 「じゃあなぜ?」 「実は、ハレルが送られた、監獄の星があるのだが、彼らが脱獄したのが今になって分かったんだ」 「そしてそ奴は、日本、それもヒロム、お前の家を監視している」 「はあ?」 俺は大きな声をあげてしまった。 彼らの王たちは、星を行き来するため、俺の所に開けたような穴をあけることができる。 いまはそれはとじているのだが。 「まさか、魔王様が開けてしまったからとか?」 「いや、いや、俺は知らなかった、報告は今になって来たばかりで、我は悪くはない!」 そういう事ね。 ただ今は、魔王様とシルフィーネ様がはった結界に守られてはいるのだけれども…? ども?なに? 「新年を迎えると、我らの結界が弱まるのだ」 「という事は弱まった隙を狙ってこっちへ来ると言う事か?」 たぶんな。 たかだか数時間です、それにどこにあるのかもわかりませんから。 「でも、見張られていると言う事はその場所をわかっていると言う事だよな?」 「そうなる、そこでだ、穴をふさぎたいのだ、ふさげば出入りできなくなるからな」 「フム、それだけですか?」 「それだけとは?」 「脱獄犯でしょ?捕まえないんですか?」 「おーそうだ」 「ですがそれは我々では」 「あくまでも神の国、手出しができないのですよ」 「神の国ですか?教えてあげたらいいじゃないですか?」 んー、と考え込む人たち。 難しいのですか? それが、新年になる時間帯、俺たちの言う年こしがそれに当たると言うのだ。 「せっかくあそこまで考えてもらったのに、閉める訳にはいかぬだろう?」 あそこ? 新年会の事だろ? 魔王様、食い意地が張っている、俺たちより、食事だよなー。 「あのー?」 手を挙げたのはシンさん。 「閉めたらもうあけることはできねえのか?」 同じ場所にはできない。 でもヒロムの家の敷地、違う場所ならばできませんか? 「できます、座標が変わればいいのでできますよ?」 「じゃあ、これは俺一人の意見だがこんなのはどうだろう?」 シンさんが話しはじめました。 おとりを使う。 それは神の国の人が、ヒロムの家族になり変わる事が出来ないかという事だ。 狙うのは年越し。 その日、俺たち家族は、魔界に来て年を越す、そうすれば、俺たち家族も守られるし、食事も事なきを得る。 シンさんとミノルは、普通に仕事こなし、帰る事で、ここに家族がいると思わせることが出来れば、捕まえる事も出来るのではないか? でも食材とかどうする? 違うルートで仕入れできないか? 違うルート? もう一つの穴、桜井さんの方をつかえないか? 「できます、通るだけなら使う事が出来ます」 俺たちが通る穴は開けっ放しだ、それは魔王様の力が大きいから、でも桜井さんが通って来た方は、ジュピターさんが開けたものでいつも開いているわけではない。 「それじゃあダメだ」 「いや、時間だけ決めれば、その間だけ開け閉めできる」 「では、こういう事ならどうだろうか?」 明日から、三十日までは、普通の仕入れ、プラス、さほど変わり名のない買い物で、ヒロムの家の方も普通に生活してもらう。 だがその間に、必要な物を運び込み、正月用に必要な物は、秘密裏に違う場所からいれていく。 一日はシンさんがもともと休むつもりでいたから、仕事終えたら、穴をふさぎ、シンさんたちは普通に帰る。 その後は、彼らに任せ、落ち着いたら、新しい所から出入りする。 「フム、そうだな、あの家が吹っ飛んでしまうことも考えれば、その方がいいかもしれぬな」 「おい、おい、待ってくれ、フッとぶってどういうことだよ」 「まあ、それは向こうに任せて」 「えーだめだ、だめだ!」 「ヒロム、今順調に仕事が出来てるんだ、この先、家より、仕事じゃねえか?ここにいることもできるし、甥っ子たちは新しい環境になるだけだ、いいんじゃねえのか?」 「簡単に言うなよ?」 「まあ、家の中だけをこっちに持ってくるのは簡単だがな」 そう言う魔王様はそっぽを向いています。 「それだ、ヒロム、それならいいんじゃないか?落ち着いた、向こうにまた戻れるよ」 上手くいけばだろ? 「ヒロム」 「はい?」 「我を誰だと思っておる、こんな事、へでもないわ、ネプラス、ゼウスに連絡」 「はっ!」 「ジュピター、月詠(つくよみ)に連絡を入れよ」 「はいかしこまりました」 「ヴィーナス、コメット、弟達に三十日までに城へ入るように連絡いたせ」 「はい」「かしこまりました」 「マーキュリー兵士たちに城の強化を」 「はっ」 「ゼタン」 「ハッ、民へ、緊急事案、すぐに通達を」 「マーズ、桜井達につなぎを、こっちは秘密裏にだ」 「はい」 「みなの物、速やかにかかれ!」 はっ! 流石魔王様。 では俺たちも。 「なあ、ヒロム、俺もこっちでもいいんだけどな」 ミノルは、一人だし、数日こっちにいてもさほど変わらない話をした、シンさんがいない分、俺もいないと困るだろうと言ってくれたんだ。 それはありがたい。 それと、もしもだよ、家が無くなったとしたら、その次は、俺の所でも構わないしと彼は言ってくれたんだ。 その時は頼むことになるなとシンさんです。 俺たちは笑いながらもこれからの予定を組むことにしたのだった。 王妃様! 「なんだと!」 「ですから、魔王からで、ハレル様の居場所が分かったと」 「どこだ?」 「それがですね、大事な案件だとかで、城へ来てほしいと言うのです」 「城へだと?」 「なんでも、本物のハレル様かどうか確認をしてほしいとかで」 確認? 「すぐに魔王城へ向かう、準備をせ‼」 こちらは黄泉の国。 「ほう―?地球に?」 「はい、そこで、魔王は介入できないので、取りものを行う場所だけを提供すると」 「それで我に、その様子を見に来いと申すか?」 「なんでも友好国のきずなを深めるため、余興を企てているらしく、こんな物が届きました」 案内状。 新年パーティーを執り行いたく、ご家族、親戚、子供たち、三十名ほど引き連れ遊びにまいらぬか?よい返事を待つ。 「まったく、いつも上からじゃなのう?我だけでなく、親戚、子供までとは、いやはや、神との戦いを退けるために必死じゃの?何を考えておるのか?」 パチンと扇を鳴らしました。 「地球に居るのは誰じゃ、つなぎを」 「はっ、すぐに」 「…確かあの時も、魔王が…まさかの?」 ヒロムの家では? 「あー、この人かな?」 「あ、居る、ヤンキーみたいな人」 「ここにもいますね?」 パソコンで、防犯カメラのチェックです。 何せ外にまで物が置かれていますからね、持って行かれてもいいのですが、近所迷惑になる事だけは避けたいので、ゴミなんかもしっかり管理しています。  冬休みで、家に居る二人の甥っ子、それと手の空いた人が家に行っています。今日は、ゼタンさんとコメットさんです。 クリスマス休暇で来ていた方々の多くはもうお帰りになられました。 年越しをする方は、半分もいらっしゃいません。 「よし、これだけあれば、王妃様も納得なさるでしょう」 「彼らは気が付いていないのですかね?」 「気付いてないと思うよ、だって、普通の民家に防犯カメラはあったとしても、一台ぐらいだからね、これは、おじきの知り合いがさ、心配して付けてくれたんだ」 「ありがたいですね」 「・・・でもな?」 「どうかした?」  コメットさん、地球という星は下等な物と聞いていましたが、彼らの知識は素晴らしいものがあります、これなんかは、私、ほしいです。 ノートパソコンをしっかり抱えています。 「これから長いお付き合いになると思うよ、俺たちは、たかだか数十年しか生きないけど、俺たちの子供が出来て、それがずっと続けば、それもいいんじゃないの?」 コメットさんはにっこり微笑んで、そうですわねと言ったんだ。
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