【 プロローグ 】

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【 プロローグ 】

 ポツポツとオフホワイトのオーニングに落ちてくる雨音に気づき、小さなショーウィンドウから外を眺めた。  先ほどまでこの下町の小さなお店に顔を出していたやさしい太陽も、恥ずかしそうに灰色の雲の後ろに隠れてしまったようだ。  半分消していたお店の照明を全て点灯させ、店内を温白色に明るく照らす。  お店の中に、今、人は誰もいない。私ひとり。  今朝、エストニアから届いたばかりのオーガニック・アーティサンハニーの小瓶を箱から出すと、店の一番手前の棚へ飾り付けた。  するとそこへ、入り口の扉を開ける音に続き、小猫の声が店内に響く。 『カランカラン……』 『ニャ~』  その音に気づき、私は扉の方を見て、まだ慣れていない言葉を少し恥ずかしそうに口にした。 「いらっしゃいませ」  そこには、背の高い少し巻き毛の若い男性の姿があった。その男性は、服に付いていた雨の雫をパンパンと払った。  足元を見ると、小猫がその男性と一緒に店内へと入ってくる。 「あっ、コータロー。こっちにおいで」  私は、飼い始めたばかりのまだ幼い10か月の小猫に向かって、少ししゃがみ込みながら右手で手招きをした。
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