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冬至まであと少し。おかげで夕方四時半過ぎともなると、辺りは暗い。
学校の帰り、ひとり静かに夜空を眺めると、不意に思い出す。
「あれ、見ろよ。ふたご座のカストルとポルックスだ」
夜空に浮かぶ兄弟星を得意げに指さし、語る男の子。
「カストルは人間で、ポルックスは神だったから、カストルが死んだ時にポルックスも死のうとしたけれど死ねなくて、ゼウスがカストルと一緒に星にしたんだよな。俺も、死んだら星になるのかな」
「バカね。星になるわけないでしょ。星好きも大概にしなさいよ」
「何だよ、ロマンのかけらもねぇな」
小学生の時に、幼馴染の彼と交わした言葉。
なるわけない、そう思っていた。八年前に彼が事故で息を引き取るまでは。
彼が亡くなってから毎年、命日に決まってメールを送っていた。たった五文字の言葉を、届くはずのない相手にしたためて……。
今年も当然のように、何のためらいもなく携帯電話を手に握っていた。
真っ暗な室内。カーテンを開けると、窓の外にたくさんの星々が見える。
時折きらりと夜空を走るように流れ、輝いては消える流れ星――ふたご座流星群。
星になった君へ
この言葉がいつか、届きますように
心の中で強く願い、メールの送信ボタンを押す。
メールの画面を閉じ、布団に入った。
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