宿屋のウンディーネ

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視線だけで分かり合うウンディーネとマンドラゴラ達からは付き合いの長さが見て取れた。 マンドラゴラ達は、使命感を帯びた目で歩き出す。代わる代わるやかんを持ってえっちらおっちらよろけている。 赤青黄色のそれぞれ違うカラーの胴体は、目にも賑やかだ。 あっちだ、こっちだ。 そう言っているかのようなマンドラゴラ特有の甲高い鳴き声もまた賑やかしの一部となる。 やかんの重さと進む方向が定まらないマンドラゴラ達は、壁にぶつかりながらキッチンを出る。 客間のテーブルの角にやかんをぶつけて、廊下を隔てた部屋へ入る。 器用に蔓を伸ばしてドアノブを捻る。 その作業は、それまで賑やかだったのが嘘みたいに静かだった。 音一つたてないで扉を開けた。 部屋には、青年が一人ベッドに横たわっている。 霧の町のブランだ。 ブランは眠りながらも眉間の皺が深く刻まれている。 青年が苦しそうに寝返りをうつ。 シーツはベッドからずり落ち、ブランの青い顔がよく見えるようになった。 赤色のマンドラゴラはシーツを手に取った。 そして、頭に生えた葉っぱから蔓を伸ばし、天井の梁に絡ませ体を宙に浮かせる。
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