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叫んでいる日野君を、私は呆然と見つめていた。下校している生徒たちも、気味悪そうに日野君を見つめている。止めようかどうか迷っていると、日野君は私を見てにっと歯を見せて笑った。
太陽みたいな笑顔だ。
「僕は雨が好きだ!」
日野君はまた叫ぶ。
日野君の髪に滴る雨粒が、きらりと零れた。それを見ているうちに、私の中に何かが突然、せり上がってきた。私は深呼吸をすると、雨の中に飛び出す。
雨の中で輝く、太陽を目指して。
ざああ、という雨音が私の肩を叩く。もう、全てがどうでも良かった。
「笑って、何が悪い!」
私も全てを絞り出して叫んだ。私の心の扉が、ガラガラと音を立てて崩れていく。
「泣いて、何が悪い!」
叫びながら、思い切り泣いた。私が泣けば泣くほど、雨が強くなってく。それでも、構うもんか。頬に涙と雨が混ざり合ったものが伝っていく。雨の帳の中で、日野君と見つめ合う。
私たちは思い切り笑った。笑わずにはいられなかった。
「雨宮さんの下の名前、なんて言うの?」
笑いながら、日野君が訊いてくる。私も笑いながら答えた。
「――美雨」
「良い名前だ」
「……でしょ?」
私たちの笑い声が、雨音の中にこだました。
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