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と、そこでのほほんとした春風みたいな雰囲気をわざとらしく身に纏った倍相岳斗がひらりと二人に近付いてきて。
「あれぇ? ひょっとして荒木さん、今日は手作り弁当? ランチをおごろうと思ってたのに残念」
瞳を目一杯見開いた倍相の様子から、言外に『珍し過ぎない!?』と付け加えられているのを感じた大葉は、(ま、それ。そいつが作ったんじゃねぇしな。荒木を昼に誘えなくて遺憾だったな、倍相岳斗!)なんて思いつつ。
何となく倍相課長に一歩リードした気がして心の中、(今朝の俺、グッジョブ!)と胸を張りたくなった。
「すみません、課長。また誘ってください」
羽理からの社交辞令に、倍相が「もちろん」と答えるのを聞きながらつい対抗心。
「いや、荒木はこれからもずっと手作り弁当持参するから無理だろ」
なんてつぶやいてしまって。
「えっ!?」
三人から一斉に注目を浴びてしまった。
「何で屋久蓑部長がそんなこと言うんですか!」
羽理にプンスカされた大葉は、思わず苦しまぎれ。
「せ、せっかく弁当箱とか用意したのに作らないとかもったいないだろ!……って思った、だけ……だ。ふ、深い意味は……ない」
と、机上にポツンと置かれたモスグリーンの包みを指さして、しどろもどろ。どうにかこうにかそう思った理由を述べたのだけれど。
「えー。羽理、わざわざお弁当箱、買ったの?」
法忍がそこへ食いついてくれてホッとする。
「か、買ったわけじゃ……」
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