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自分が作ったわけでも弁当箱を用意したわけでもない羽理がオロオロするのを見て、(それは忘年会のビンゴ大会の景品だぞ、荒木)とふふん、としたと同時、『あ!』と思った大葉だ。
そう、あれは会社の行事ごとで大葉が手に入れた品だ。
鈍そうな女子社員二人はともかくとして、一見のほほんとして見えるがその実やり手な倍相岳斗は勘付くかも知れない。
それに――。
「もぉ、煮え切らないわね! どんなお弁当箱なのか見せてみなさいよ!」
法忍が羽理を急かして皆の前で包みを解かせてしまったからたまらない。
(マズイ……)
包みの下から姿を現したのは白木の曲げわっぱで。
「えっ!? 何で!?」
仲の良い同僚のことを知悉している法忍が、それを見て驚いたのも無理はない。
「ちょっと羽理! あんた、いつから犬派に転身したの!」
白木のふた部分。
大葉が、風呂敷と箸が可愛くない分、少しでも女子っぽく見えるように……と思って貼った、ミニチュアダックスの愛らしい防水ステッカーが鎮座ましましていたからだ。
(ウリちゃんイメージのステッカーだぞ? 可愛いだろう!)
と言うのはもちろん建前。
ニブチンの羽理に、食べる直前。少しでもいいから自分が作った弁当なのだと意識して欲しかっただけ。
そう。
言うなれば、大葉が己の存在感を主張してみただけのステッカーに他ならなかった。
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