10.夕方は予定をあけておくように!

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 羽理(うり)が行くのは無理だと分かっても、上司に(おご)ってもらうモード全開になっていた法忍(ほうにん)仁子(じんこ)は諦めなかった。 「羽理とはまた後日出直せばいいじゃないですかぁ〜。私はもう、課長に提案されたお好み焼き屋さんの口になってます!」  なんて具合。  倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)は、仁子の圧に負ける形で、()き立てられるようにしてランチへ駆り出されてしまう。 (おう! 行ってこい、行ってこい!)  仁子の強引さに心の中で拍手喝采(かっさい)を浴びせつつ、そんな部下二人を愛しの羽理とともに見送った屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)だったのだけれど。 *** 「倍相(ばいしょう)課長って、のほほんとしてるようで、実は案外鋭いところがありますよねー」  ネギがたっぷり入った、甘めの卵焼きを摘み上げながら、羽理(うり)がほぅっと吐息を落としながらポツンとつぶやくから。  先ほどのことを嫌でも思い出させられてしまった大葉(たいよう)だ。  法忍(ほうにん)仁子(じんこ)と二人、財務経理課を出ていくとき、倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)がふと立ち止まって。 「あ、そう言えば……」  まるでとつい今し方気が付いた、と言った(てい)で羽理を振り返ったのだ。 「よく考えてみたら荒木(あらき)さん、今日は裸男さんと彼女さんのお宅からの出社でしたよねー? ……ってことは、そのお弁当は荒木さんが作ったんじゃなくて、裸男さんか、彼の彼女さんの手作りなんじゃないですか?」  と――。  悔しいけれど大葉(たいよう)は、その言葉にぐうの音も出なかったのだ。 「あ、は、はい……。実は裸男さんが自分のを作るついでに作ってくれました」  自分が作ったわけではないのは確かだったので、羽理が思わずその言葉を肯定して。  仁子が嬉し気にポン!と手を打った。
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