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「……へっ?」
途端羽理に、鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな真ん丸い目をされて、「何だよ。まだ何か文句あるのか⁉︎」と息巻いた大葉だ。
「あ、あの……文句と言うか……。その、ひ、ひとつ質問なんですけど……。屋久蓑部長って……もしかして……私のこと、好き……だったり……します、か?」
だが、ソワソワと落ち着かないみたいに羽理から恐る恐るそう確認されて、一気に怒りが冷めて。
「だっ、誰がっ! 誰をだ!?」
あわあわしながら、逆に羽理へ問いかけてしまっていた。
「だから……部長が……私を、です。……あ、あのっ。わ、私の勘違いならいいんです。……忘れて下さいっ」
言うなり、羽理がくるりと大葉に背中を向けて走り去ろうとするから。
大葉は慌てて彼女の手を掴んだ。
「バカっ。タクシーで来たのに歩いて帰る気かっ。そんなんしたら午後の業務に遅刻するだろっ」
(違う、言いたいのはそんな言葉じゃないっ!)
握った羽理の手首が自分とは比べ物にならないほど華奢で……。少しでも力を込め過ぎてしまえば折れてしまいそうに細かったから。
大葉は今更ながら、羽理は〝異性〟なのだとハッキリ認識させられてしまう。
こちらからは羽理の後ろ姿しか見えないけれど、ちらりと見える耳が真っ赤になっていて。
それが何だかたまらなく大葉の胸をキュンとときめかせた。
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