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「た、タクシーくらい自分で拾えるので大丈夫ですっ」
なのに、そんな可愛い羽理がこちらを振り向かないままに、有り得ないくらい非情な言葉を投げ掛けてくるから。
大葉は、思わず背後から羽理をギュッと抱き締めてしまっていた。
「ひゃっ、部長!?」
「か、勘違いなんかじゃねぇから……! だから……その、俺を置いて行くなっ」
自分でも恥ずかしいくらい声が上ずっているのが分かって、大葉は一度だけ大きく深呼吸をする。
(心臓がうるさすぎて敵わん!)
加えて頭の中で自分の分身たちが、『こら、大葉! 今すぐ告白し直ちまえよ!』だの、『いっそのこと振り向かせてキスしたほうが手っ取り早いんじゃねぇか!?』だのてんでバラバラにやいのやいのと騒ぎ立ててくるからたまらない。
「……ぶちょ、苦し……」
それで無意識。
羽理を抱きしめる腕に力を込めすぎてしまったらしい。
「あ、すまんっ」
慌てて腕の力を緩めてからもう一度深呼吸をすると、大葉は腕の中の羽理を自分の方へ向き直らせた。
そうして、やっとの思いで胸の内を語り始める。
「……あ、荒木羽理……さ、ん。お察しの通り、俺は……キミのことが好きだ……。だから、その……お、俺と……」
――付き合って欲しい!
そう言えば済むだけの話だ。
だが、テンパる余り、大葉はしどろもどろ――。
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