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屋久蓑大葉こと〝裸男〟からメールの返信があって、羽理は画面を眺めて(部長、そんなに慌てるくらいならお電話をっ)と思った。
というのも、大葉から『今、シャワールーム前。サッと汗を流していくから悪いけど骨片のなかで待っていてくれ』と不可解なメールが送られてきたからだ。
(打った文章を読み返すのも無理でしたかっ!?)
メールを読んですぐは(骨片って何だろう?)と頭を悩ませた羽理だったけれど、それが自分の愛車のことかも知れないと思い至ってからすぐ、コッペンちゃんが恐竜の骨格標本みたいに骨になったところを想像してしまった。
カタカナにすべきコッペンが、誤変換で〝骨片〟になっているのが何ともシュールではないか。
まさかシャワーを浴びながら打ったわけではないと思うけれど、慌てた様子で画面をタップしている大葉の姿が思い浮かんでくるようで、羽理は思わずクスッと笑ってしまう。
ずっと、小難しい顔をして取っつきにくいと思っていた屋久蓑大葉は、話してみれば案外可愛いところのある人だった。
それに――。
髪を下ろしていると幼く見えるから、いつもよりガードが甘くなる気がして。
初っ端の出会いが風呂上りだったこともあって、羽理の中では、大葉に対して持っていたはずの〝近づきがたい上司〟という壁がいつの間にか取っ払われてしまっていた。
そう言えば、今日、大葉は髪の毛を下ろしていたことで、他の女子社員たちからも変な注目を集めていた気がする。
ランチに行った際、彼の数歩後ろを歩きながら感じた違和感に、(屋久蓑部長の癖に何か生意気です!)とか理不尽なことを思って。
「なぁに、羽理。百面相の練習?」
すかさずすぐ隣、帰り支度を始めた法忍仁子から突っ込まれてしまう。
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