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どう考えたって「お疲れ様ぁ~」な、仕事後の慰労会になるだろうし、お好み焼きを焼きながらとか、鉄板上のモノを焦がさないよう気を付けないといけなくて、色っぽい雰囲気だって漂わないはずだ。
(仁子もケロッとして帰って来てたしね)
仁子のことだから、倍相課長と二人きりで出かけて何か艶めいたことがあったなら、絶対に報告してくれたはずだ。
それがなかったのだから、きっと二人とも自分のお好み焼きを焼くので一杯一杯だったんだろう。
(あっ、そうだ! ついでだし……倍相課長にお願いして、私は私でワンコくんを労ってあげる場にさせてもらっても良いかもしれない)
チョロルチョコのお礼にはちょっと高過ぎるかも知れないけれど、一応羽理は五代懇乃介の先輩だ。
先輩の方が後輩より奮発するのは変じゃないだろう。
それに――。
倍相課長と営業の五代を交えて、領収書などの回し方のことを話題に出してみるのも悪くないかも?
(となると、五代くんの直属の上司の雨衣課長も一緒の方がいいかなぁ)
あれこれ考えていたら、心がお留守になっていたらしい。
「荒木? おい、荒木羽理!」
目の前でパチン!と大葉に両手を打ち鳴らされて、羽理はハッとした。
「ふ、フルネームで呼ばないで下さい!」
そうされると、「あらキュウリ!」と揶揄われたのを思い出してしまうではないか。
自分がぼんやりしていたのを棚上げしてプンスカしたら、大葉がキョトンとして……。
「だ、だったら」……とかゴニョゴニョ言いながら……「う、羽理……さん?」と何故か照れ臭そうに下の名前で呼び掛けて来る。
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