11.お買い物デート

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「えっ!? な、何でいきなり下の名前になるんですかっ。そんなのされたら私も……たっ、大葉(たいよう)さんって呼んじゃいますよ!?」  羽理(うり)としては『もぉ、部長ったら冗談が過ぎますよぅ?』と、彼を(いさ)めたつもりだったのだけれど。 「な、何なら……呼び捨てでも構わんぞ?」  とか、どういうことだろう? 「はいっ!?」 「だから……〝さん〟はなくても平気だ。というかむしろない方がいいな、うん。……お、俺もお前のこと、その……う、羽理って呼び捨てるからお前もそれで」  まるで羽理に口を挟ませたくないみたいに、しどろもどろになりつつも口早にまくし立てた大葉(たいよう)が、「よし、行くぞ、う、羽理! 駐車場(こんなトコ)でいつまでもモタモタしてたら店が閉まっちまう」と羽理の手首を握ってスタスタと歩き出してしまう。 「あ、あの……ちょっと、屋久蓑(やくみの)ぶちょ……」  羽理がそんな大葉(たいよう)にいつも通り。〝屋久蓑(やくみの)部長〟と呼び掛けようとしたら華麗に無視されて。 「あ、あのっ。部長……」  足の長さの差だろうか。  速足で歩く大葉(たいよう)について行くのがしんどくて、小走りになりながら何度も部長、部長と呼び続けていたら、だんだん息が上がってきてしまった羽理だ。 「た、た、た、た、た、た……」  息苦しいし、何とか止まって欲しくて「大葉(たいよう)」呼びを試みてみたものの、何だか照れ臭くてやっぱり難しくて。 「お前は壊れたレコードか……!」  とうとう我慢しきれなくなったらしい大葉(たいよう)に、こちらを見ないままに突っ込まれてしまう。
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