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「えっ!? な、何でいきなり下の名前になるんですかっ。そんなのされたら私も……たっ、大葉さんって呼んじゃいますよ!?」
羽理としては『もぉ、部長ったら冗談が過ぎますよぅ?』と、彼を諫めたつもりだったのだけれど。
「な、何なら……呼び捨てでも構わんぞ?」
とか、どういうことだろう?
「はいっ!?」
「だから……〝さん〟はなくても平気だ。というかむしろない方がいいな、うん。……お、俺もお前のこと、その……う、羽理って呼び捨てるからお前もそれで」
まるで羽理に口を挟ませたくないみたいに、しどろもどろになりつつも口早にまくし立てた大葉が、「よし、行くぞ、う、羽理! 駐車場でいつまでもモタモタしてたら店が閉まっちまう」と羽理の手首を握ってスタスタと歩き出してしまう。
「あ、あの……ちょっと、屋久蓑ぶちょ……」
羽理がそんな大葉にいつも通り。〝屋久蓑部長〟と呼び掛けようとしたら華麗に無視されて。
「あ、あのっ。部長……」
足の長さの差だろうか。
速足で歩く大葉について行くのがしんどくて、小走りになりながら何度も部長、部長と呼び続けていたら、だんだん息が上がってきてしまった羽理だ。
「た、た、た、た、た、た……」
息苦しいし、何とか止まって欲しくて「大葉」呼びを試みてみたものの、何だか照れ臭くてやっぱり難しくて。
「お前は壊れたレコードか……!」
とうとう我慢しきれなくなったらしい大葉に、こちらを見ないままに突っ込まれてしまう。
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