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(その上目遣いはやめろ、荒木羽理! 可愛すぎて照れるだろーが!)
とソワソワと顔を背ける大葉を興味深げに観察してから、クスッと笑うと、
「……実際お話してみると、ちょっぴり挙動不審なところはありますけど……全然怖いとかはないですよね? ……ひょっとして、那須さんが言ってたのは別人のお話でしょうか?」
と問いかけてくる。
「や、屋久蓑って変わった苗字の人間が、うちの社に何人もいればそうだろうな……!?」
「……居ないですね」
「だろ? だから……、それは俺のことだ」
若い頃、大葉はかなりモテた。
同期たちを差し置いて一人課長に昇進してからは、それがますます顕著になって……。
以前にも増してやたらと女子社員から囲まれまくるようになって、要らぬ噂や誹謗中傷まで飛び交うようになり、仕事にも支障が出始めたから。
(……面倒くさくて塩対応してたら、鬼だのゲイだの言われ出したんだよな)
那須から話を聞いたのなら、羽理も鬼課長の話だけではなく後者の噂も耳にしたはずだ。
(何せ、俺が相手にしなかった腹いせにそういうデマを流した張本人が那須だしな)
だが羽理は、大葉に話す時、あえてそこはカットしてくれたんだろう。
(そういうところが……お前をますます好きにさせるんだぞ? 分かってんのか、荒木羽理っ!)
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