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大葉が羽理を見詰めてうにゃうにゃとそんなことを思っていたら、
「じゃあ……きっとあの噂はデマですね。ぶちょ……、たっ、……たい、よぉ?……がそんな感じの人じゃないのは私、知ってますもん。ほら、今日だってわざわざ私のためにお買い物付き合ってくれてますし……全然鬼っぽくないです」
すぐそばで「へへっ」と笑い掛けてきた羽理にそんな追い打ちを掛けられて、大葉はズキュン!と心臓を射抜かれる。
(おっ、お前は俺を殺す気か!)
羽理の不意打ちのこういう態度は心臓に悪い。
萌え死ぬとか悶え死ぬとか……世の中にはそんな言葉があるらしいが、まさに死因がそれになりそうで――。
大葉は羽理の手をギュッと握ったまま、それとは逆の手で心臓をグッと押さえた。
「あのっ、部長、ひょっとして具合が悪いんですか?」
「ぶちょぉじゃなくて……た、いよう……な?」
ドキドキと騒がしい心臓を庇いながらもそこだけは譲れない大葉が、呼吸を整えながらも何とかそう訂正したら、羽理が小さく息を呑んだのが分かった。
***
(もぉ、ホント、この人はどうしようもない強情っぱりさんですね)
深呼吸を繰り返しながらも途切れ途切れに呼び名を訂正してきた大葉に、羽理は思わず息を呑んで……。
溜め込んだ吐息を一気に吐き出すように、盛大に溜め息をこぼさずにはいられない。
(けど……そこまで言うんなら私、遠慮しませんから! 後からやっぱり上司としての威厳が!とか言って来ても知りませんよ!?)
もうここまで意地を張られたら、こっちだって開き直ってやる!と決意した羽理だ。
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