12.苦しい言い訳

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(ん? 何やら俺を知ってるようだが俺はお前を知らん! キサマ、一体何者だ!?)  目を白黒させて自分と羽理(うり)を交互に見比べる若い男を見て、屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)に思ったことはそれだった。 (俺のことを知ってて……なおかつ羽理のことを先輩呼ばわりするってことは……もしや会社の人間か?)  ややして、そう思い至った大葉(たいよう)だったが――。  すぐさま、(まぁ、けど……うちの部の人間じゃねぇな)と言う結論に達した。  そもそも自分のすぐひざ元にいた羽理のことすら――こんなに可愛いのに!(←重ね重ねしつこいようだが、あくまでも大葉(たいよう)主観)――眼中に入っていなかった大葉(たいよう)だ。  若い頃、目を惹く外見のせいで酷い目に遭ってきたのもあって、基本自分と関わりのない他者には線引きをして過ごしている大葉(たいよう)は、他部署の人間――しかも平社員などほぼ記憶に残していないに等しい。  だが眼前のチャラ男の、羽理との距離感が気に入らない!と言うことだけはハッキリと分かったから。 「……俺の名前を知っているということは――キミもうちの社の人間か?」  聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず当たり障りのないところから、なるべく感情を抑えて問い掛けてみることにした。 (大体俺より背が高いと言うのも気に入らん!)  大葉(たいよう)は、一七六センチの自分よりほんの少し背の高い眼前のチャラ男に、どうしても好い印象が持てそうにない。
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