12.苦しい言い訳

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「営業のくせに知らないのか。ドラッグストアにも最近は生鮮コーナーがある」  ――しかも下手したらスーパーより安い、と心の中で付け加えつつ。 (卵とか牛乳とかお買い得品も多いからな)  などと、ついつい主夫目線でものを考えてしまった大葉(たいよう)だ。 「マジですか」 「ああ、大マジだ。嘘だと思うならキミも後で見てみるといい。――案外近所のスーパーより安い食材とかあるぞ」 (おすすめは卵や牛乳だが、そこまでは教えてやらん) 「へぇー。俺、料理しないんであんま関係ないっすけど……」  そこでちらりと羽理(うり)に熱い視線を送った懇乃介(こんのすけ)が、「けど……彼女が出来た時、飯作ってもらう際の参考にさせてもらいます!」とにこやかに笑う。 (残念だったな。そいつは食うの専門だぞ?)  その視線が憎たらしく感じられて、つい悪態をついた大葉(たいよう)だ。 「うん、うん。そうするといいよぉ~。前に仁子(じんこ)が卵とか牛乳なんかがお買い得だって話してたから。――参考にして?」 (バカっ! あえて伝えなかったを簡単にバラすな、荒木(あらき)羽理(うり)!)  大葉(たいよう)が羽理を恨みがましい目で見詰めたと同時。 「五代(ごだい)くんに一日も早くが出来るようね!」  鈍感娘羽理がヘヘッと笑いながら、懇乃介(こんのすけ)の好意に満ちた視線をいとも簡単に叩き潰してしまう。
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