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「お、お前らっ。……長話が過ぎるぞ? ……羽理、さっさとそれ、かごに入れろ。生鮮食品コーナーへ移動するぞ!」
グイッとかごを突き出して羽理が手にしたファンデーションを中に入れさせたと同時――。
「――あの、さっきから気になってたんですけど……視察なのに何故ファンデーション? そもそも荒木先輩、何で化粧品コーナーにいたんっすか?」
懇乃介から、至極ごもっともな質問が投げかけられた。
***
「そ、それはっ」
懇乃介の言葉に思わず言葉に詰まってしまった羽理だ。
助けを求めるようにすぐ横に立つ大葉を見上げたら、俺に振るなよ!と言いたげな顔をされてしまう。
だが――。
「キミもさっき俺たちに言っただろ。もう定時過ぎてんだ。彼女には俺の視察に付き合ってもらう代わりに好きなモン買ってやるって約束してあんだよ」
ぶすっとした調子ながらも大葉はちゃんと助け舟を出してくれた。
「なるほど。……けど、荒木先輩は財務経理課所属ですよね? いくら総務部の人間だからって……屋久蓑部長の視察に付き合ってること自体変じゃありません?」
大葉がおさめる総務部には企画管理課もある。リサーチならそちらの社員の方が適任と言えた。
五代懇乃介はそれを指摘しているのだろう。
懇乃介には、こんな感じで案外鋭いところがある。
羽理が面倒を見ている時からそうだったけれど、抜けているように見えて案外物事の本質は見えていたりするのだ。
それに加えて物怖じしないところと、少々のことでは諦めないしつこさが営業に向いていると見初められての、営業課への配属だったのだけれど。
(お願いだからここでそれを発揮しないでっ)
と思ってしまった羽理だ。
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