13.お医者様でも草津の湯でも

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屋久蓑(やくみの)部長だって所詮は男の人だもん! 隙を見せたら絶対危険っ)  大葉(たいよう)が、散々最高の据え膳たる裸の羽理(うり)を前に、理性を総動員して手を出してこなかったことを頭の片隅に追いやって、羽理はそんな失礼なことまで思ってしまう。  それに実際、隙ならば倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)たちとの飲み会で酔っ払った時、これでもか!というくらい見せ付けてしまっていることも、都合よく忘却の彼方(かなた)だ。  とにかく羽理にとって性行為は妊娠と隣り合わせの行動で……結婚する気もないのにしちゃうのには、どうしても抵抗がある。  それで過去、唯一付き合ったことのある彼氏に見切りをつけられたのを踏まえ、就職したのを機に心を入れ替えたつもりだった。  相手もある程度稼ぎのある男性ならばきっと何とかなるはずだし、もう少しゆるっと行こう……と。  でも、もし羽理が相手に妊娠をしてしまったとして、堕胎を迫られたら?  それは嫌だと突っぱねるのは大前提として、では自分が実母のように一人で子供を育てていけるのか?と考えたら、泣きたいくらい胸がキューッと苦しくなった。  自分が幼いころ、父親のいるに強い憧れを抱いていたことを忘れられない羽理は、やっぱり自分と同じ思いを我が子にはさせたくないと(こいねが)ってしまうから。  いざ大葉(たいよう)と同室で寝なきゃいけないかも?と思ったら、そんな考えなくてもいいアレコレが押し寄せて来て、にわかに怖くなったのだ。 (屋久蓑(やくみの)部長からは好意を持っているようなことは言われたけど……結婚しようってプロポーズされたわけじゃないもんっ)  そんなことを思いながらも、大葉(たいよう)を突っぱね切れない自分の心の矛盾と葛藤(かっとう)しまくりの羽理は、無意識に胸に(かか)えた大葉(たいよう)のスーツをギュウギュウ抱きしめまくって。  見かねた大葉(たいよう)から、「こらっ。シワになる!」という言葉とともに奪い取られてしまう。 「ひゃっ!」  その瞬間、期せずして大葉(たいよう)の指先が腕に触れてしまったからたまらない。  またしても心臓が大きく飛び跳ねてしまった羽理は、とうとう話の流れ度外視で「わ、私っ、心臓の病気かも知れません!」と訴えていた。
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