13.お医者様でも草津の湯でも

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***  突然羽理(うり)から病気かも知れない宣言をされた大葉(たいよう)は、取り戻したばかりのスーツを思わず落とすと、羽理の両肩をグッと掴んだ。  二人の足元でことの成り行きを見守っていたキュウリが、突然降ってきた大葉(たいよう)の服に驚いてビクッと身体を震わせて足を滑らせたのだが、大葉(たいよう)はそれにも頓着(とんちゃく)出来なくて。  いつもならば大切な愛犬が自分の不手際(ふてぎわ)でそんなことになったとあれば、謝罪とともに慌ててキュウリを(ねぎら)うはずなのに、今日はそんなことも気遣えないみたいに羽理しか見えていなかった。 「羽理っ、お前心臓の病気かもって……。何か自覚症状が出てるのかっ!?」  両手で掴んだ羽理の肩が余りにも華奢(きゃしゃ)なことが、大葉(たいよう)の不安を更に掻き立てる。 「――ああああ、あのっ、お、お願いですから手っ、放してくださいぃぃぃ。ぶちょ、からそんなことされたら……私、ますます心臓がバクバクして死んでしまいます……」  ギュウッと胸の辺りを押さえて、羽理が眉根を寄せて大葉(たいよう)を見上げてくるから。  大葉(たいよう)は慌てて羽理から手を放した。 「すまん! 俺、お前が心配で思わずっ! ……羽理、大丈夫か!?」  羽理の手の下で押しつぶされた彼女の胸の膨らみを見て、大葉(たいよう)はソワソワと落ち着かない。
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