13.お医者様でも草津の湯でも

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 相手が女性じゃなかったら。すぐさま自分もそこへ耳を押し当てて、彼女の心臓の様子をうかがうことだって出来るのに!  羽理(うり)に何かあるかも知れないと思うと、心配する余り大葉(たいよう)の鼓動も妙に乱れて息苦しさを覚えてしまう。  それで無意識――。  羽理と同様胸に手を当てて深呼吸をしつつ心を落ち着けようとしたら、羽理に心配そうな顔で見上げられた。 「……もしかして……大葉(た、いよぉ)も……心臓(しんぞ……)、痛い、の……?」  自身の胸の膨らみを掴んだまま。  羽理のもう一方の小さな手が、ワイシャツの胸元を押さえた大葉(たいよう)の手にそっと触れてくるから。  大葉(たいよう)の動悸は、さらに急加速してしまう。 「お、俺のは……単なる生理現象だ。……お、お前がその手を放してくれたら治る……!」  言って、その言葉に何となく既視感を覚えた大葉(たいよう)だ。 (ちょっと待て。異性に触れられるのが引き金で起こる心臓のバクバクって……) 「なぁ羽理。もしかしてお前の心臓……」  自分の胸から手を放した大葉(たいよう)は、目の前で自分をじっと見上げてくる羽理を、ギュッと腕の中に抱き締めて閉じ込めた。 「や、ちょっ、ダメっ……! そんなのされたら……私、私……!」  羽理が身体を固くして身じろぐのを、彼女の後頭部をグッと押さえるようにして自分の胸に押し当てて。 「もしかして……お前の、俺のと一緒じゃないのか?」  大葉(たいよう)は、そうだったらいいなと思って問いかけていた。
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