14.いなくならないでくれ

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「たい、よ……は心臓痛くな……るの、怖くない、の?」  いつキュッと胸を締め付けられて、心臓が止まってしまうか予測不能だと言うのに。  そんなことを思いながら胸の不快感に眉根を寄せたら、 「んー。お前がそばにいてくれることで起こる動悸や息切れなら、俺は割と平気だな。それよかむしろ――」  言いながら一本のワインを手に取った大葉(たいよう)に、「羽理、辛口ワインは飲めるか?」と聞かれて。  羽理がよく分からないままにコクッとうなずいたら、それをカゴに入れながら「俺は……お前がいなくなることの方が怖い」と付け加えられた。 「え……?」 「ま、あれだ。そういう想像したら死ぬほど胸が苦しくなるってだけの話。……そうならないよう俺も頑張るから……。頼む。いなくならないでくれ」  言うなり、ギュッと背後から抱き締めるように身体を包み込まれた羽理は、(そ、それはっ……逃がさない、の間違いではないですか、屋久蓑(やくみの)部長っ!)とオタオタしつつ。  それでも大葉(たいよう)が、切なげに自分へ向かってそんなことを言ってくれることが何だか嬉しくて。  なのにその理由に思い当たれないことが、羽理はもどかしくてたまらなかった。
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