14.いなくならないでくれ

7/9

1999人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
*** 「つい今し方も俺のこと、手練(てだ)れって言っただろ。だが実際、俺は恋愛経験も全然豊富じゃないし、恥ずかしい話、リードしてくれるような年上としか付き合ったことがない。肉体関係を持った相手だって片手で足りる」  馬鹿正直に告白してやるつもりはないが、明言すれば(ぶっちゃければ)大学時代入っていたサークル『野草研究会』の三つ上の先輩と、社会に出てからたまたま知り合った行きつけのバーの常連客だった八つ年上の女性。  大葉(たいよう)は、その二人としか致していない。  相手が年上だったこともあり、どちらも女性に主導権がある形での情交だった。  だから羽理にその道の上手(プロ)みたいに思われるのは大変遺憾なのだ。  そもそもそんな風に思われてしまったら、いざ羽理(うり)になった時、手際が悪いとか思われそうで怖いではないか。 (自慢じゃないが、俺は処女なんて相手にしたことないんだぞ!?)  それが本音の大葉(たいよう)だが、そこはまぁ男としての沽券(こけん)に関わるから言うつもりはない。  実際大葉(たいよう)が寝た二人は、どちらも至らない大葉(たいよう)を巧みにリードしてくれるような床上手(とこじょうず)な女性たちだったから、大葉(たいよう)は相手に()われるままアレコレご奉仕しただけに過ぎないのだ。 (俺が主体になってどうこうなんて経験はねぇんだが……実際上手く出来るのか、俺‼︎)  なんて思っている大葉(たいよう)を横目に、ひと口もふた口も変わらないと開き直りでもしたのだろうか。  羽理が卓上に置いてあったワイングラスをクイッ!と煽って(カラ)にした。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1999人が本棚に入れています
本棚に追加