14.いなくならないでくれ

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 そんな羽理(うり)につられたように、大葉(たいよう)もワインをひと口飲んで口を湿らせてから、(から)っぽになった羽理のグラスを新たなワインで満たしてやる。  少し触れただけで過剰反応しまくる羽理(うり)の現状からして、今夜何かがあるとは思えないけれど、いずれは……と期待している大葉(たいよう)にとってその辺りはちょっぴり悩ましいところだったから。  なのに――。 「片手ってことは五人経験がありゅってことれしゅかっ!?」  とか。 (何でそうなる……)  荒木(あらき)羽理(うり)と言う女性(おんな)は、もしかして大葉(たいよう)に「二人しかいねぇわ!」と赤裸々告白でもさせるつもりだろうか。 (マジで勘弁してくれ……)  さすがに「童貞です」というのよりはハードルは低いが、それでもいないと思われるのは何となくプライドが邪魔をする。 「……ご、五人マックスはいねぇーわ」  それでゴニョゴニョと言葉をにごしたのだけれど。 「妖しいもんれしゅね……。大葉(たいよぉー)はハンシャムしゃんれすし……モテないはずがないれしゅもん」  羽理(うり)の口調が、どこかとして感じられるのは、ワインが程よくきいているのかも知れない。  以前飲み会の場に迎えに行った時みたくデロデロに酔っぱらってはいないけれど、このしつこさはアルコールの影響を受けていそうだ。  そもそも――。 (こいつ、いま……舌っ足らずの口調で俺のこと、ハンサムとか言わなかったか?)  そこを意識したら、思わず顔がにやけてしまいそうになった大葉(たいよう)だ。
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