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「女性と二人ならどこかのお店にって思ってましたけど、お相手の方が望むならこういうランチも悪くないですね」
羽理は今、会社近くの公園で、倍相岳斗と二人並んでベンチに腰かけて、お弁当を広げている真っ最中。
一旦は大葉の手作り弁当を、仁子に食べてもらおうかと思った羽理だったけれど。
どこかから戻ってきた不機嫌そうな大葉の顔を見たら、どうにも後ろめたくなってしまった。
うかがうようにじっと大葉の顔を見つめていたのがバレた時、思わず視線をそらしてしまったのが決定打になって、仁子が席を空けた隙。
良心の呵責に耐えかねた羽理は、岳斗に「ランチには外でお弁当とかどうですか?」と提案してみたのだ。
最初は「え?」と驚いた顔をした岳斗だったけれど、「実は私、今日もお弁当を持って来てまして……」と正直に告白したら「そういうことでしたら」と納得してくれて。
しばし考えたのち「じゃあディナーに切り替えますか?」と聞かれたのだけれど。
「あ、あのっ。……それでは遅すぎると思うのです!」
そう力説して再度岳斗を驚愕させてしまった。
ただ単に、自分に問題があるならば早めにお聞きして、午後からの仕事に生かしたいと思っただけだったのに……そんなに驚かなくても良かろうに、と思ってしまった羽理だ。
そんなことを思いながら羽理がキョトンとした顔で小首を傾げると、岳斗は小さく吐息を落として――。
「荒木さんが僕との食事をそんなに待ち遠しく思って下さっているなんて思いませんでした。……何だかすっごく光栄です」
とにっこり微笑んでくれた。
待ち遠しく?と岳斗の言い回しにちょっぴり疑念を抱いた羽理だったけれど、早く話して欲しいと希うのは、そういう言い方も出来るのかな?と思い直して、深くは追及しなかった。
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季節は夏に向かってまっしぐらな初夏の折。
さすがに余り日当たり良好の場所だと暑くてたまらないけれど、木漏れ日の射すここは良い感じに心地よい。
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エッセイ824頁に羽理のお弁当箱などについて書いています。
https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=824
もしご興味があられましたらପ(⑅︎ˊᵕˋ⑅︎)ଓ
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