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(な、何でご存知なんですかっ!)
裸男というパワーワードが岳斗の口から飛び出して、咄嗟のことにワタワタと慌てそうになったものの、実際に作ってくれたのは裸男の彼女さん――大葉の愛犬キュウリちゃん――ではなく、裸男自身だ。
大葉が聞いたら、「いや、俺の彼女はウリちゃんじゃなくてお前だろ!?」と憤慨しそうなことを思いつつ。
その差異に、(バレてない、よね?)と気付いた羽理は、ちょっとだけホッとする。
その上で、わざわざ裸男を持ち出されたことに疑念を抱いた羽理は、「あ、あの……私、昨晩もよそ様へお泊りしたって……課長にお話しましたかね?」と瞳を泳がせながらも質問に質問で返すと言う卑怯な戦法に出た。
そうしながらも心の中、(そんな話より、早く仕事のことを指摘してくださいっ! あんまり部長のことを考えると心臓に悪いのでっ!)なんてことも思っていたりする。
「ううん。聞いてないよ? ただ――」
そこで羽理をじっと見つめると、岳斗がスッと手を伸ばしてきた。
真剣なまなざしとともにズンズン近付いてくる〝推し〟の手に、思わずじっと見入って。
(あ! 何かいいシーンがひらめきそうです!)
などとどうでもいいことを考えている羽理だったのだけれど。
キュッと柔らかく髪の毛に触れられた瞬間、身体にビリリ!と電撃が走った。
(よっしゃぁー! きたぁぁぁっ! ああ、今すぐ帰って『あ〜ん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』の星特典を書き上げたい!)
羽理は、ウズウズとはやる気持ちを、お弁当箱と箸を握る手に力を込めてグッとこらえる。
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