15.腹黒課長の猛攻

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 屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は同じような経験から女性を避けることを選んだのだけれど、倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)は逆にそんな女性たちの好意を利用する方へ流れたタイプだ。  岳斗は、今までとしたで、釣り上げた女の子たちを適当に食い散らかしてきた。  もちろん相手がそうと気付くような馬鹿な別れ方はしないし、何ならあと腐れのない相手を選んで寝ることの方が圧倒的に多い。  都合のいいセフレたちとは、利用価値を感じなくなった後も、表向きは円満な関係を続けるのがモットー。  面倒事はイヤなので、社内や取引先の女性とは関係を持たないことも徹底してきた。  だが、荒木(あらき)羽理(うり)はそういう女性たちとは明らかに違う雰囲気だったから……。生まれて初めて本気。それこそ掛け値なしで手に入れたいと思ったのだけれど。  正直これが案外手強くて苦戦している岳斗だ。 (キスしようとして拒まれたの、初体験だよ……)  羽理には場所の問題じゃないと否定されたけれど、それだってきっとゼロではないはずだ。  髪の毛に触れることは許してくれたのに、その先はNGとか、岳斗的には想定の範囲外。羽理が何を考えているのか、はっきり言ってサッパリ分からない。  そればかりか、羽理は仕事のことで何か伝えることがあって、岳斗が自分を食事に誘ったとかバカなことを思っているらしい。 (二人きりで食事に行かない?って聞かれて……普通そっちに受け取る? ――ヤバいな、発想が斜め上過ぎて、全然読めないトコ。逆に燃えるんだけどっ)  仕事の話ならば、社内の小会議室でも押さえれば済む話だ。  わざわざ食事に誘ってまで指導しようとは思わないし、そんなことをしたら勘違いするのが女性と言うものではないか。 (僕はキミに勘違いして欲しくてわざわざ外へ誘ったのに。少しは色気のある方向へ考えてよ) *** 「荒木(あらき)さん、僕は別にキミの仕事態度について不満に思っていることなんてひとつもないよ? ……そればかりか、むしろ凄くよく頑張ってくれる、非の打ちどころがない部下だなとさえ思ってる。――そんなキミが、どうしてそんな勘違いをしたのか、逆に聞かせてもらいたいな?」
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