16.その女性(ひと)は誰ですか?

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 結局裸男の彼女はワンちゃんだと告白した後、岳斗(がくと)が黙り込んでしまって。  先に弁当を食べ終わっていた羽理(うり)は、気まずい空気の中、ひとり手持ち無沙汰(ぶさた)。  何事かを考えているのだろうか。  岳斗が時折小さく吐息を落としたり、ぼんやり中空を見つめたりしながらも黙々と弁当を食べている横で。羽理はずっと、大葉(たいよう)が買ってくれた真新しい保冷機能付きランチバッグの持ち手をモジモジといじっていた。  と、保冷袋のサイドポケットに入れているスマートフォンが、未確認通知ありのランプをピカピカさせているのに気が付いて――。 (あ、そう言えば携帯、朝から全然見てなかった!)  今日は何だかバタバタしていてスマートフォンを見るのをすっかり忘れていたのを思い出した羽理だ。  ソワソワしながら通知画面を開いたら、〝裸男〟からのメッセージが一件、未読のままになっていた。 『何かあったのか?』  たった一言しか書かれていない、それを受信したのは午前九時過ぎ。  羽理は、朝一でどこかへ行って帰ってくるなり、すっごく不機嫌な顔をしてフロアに入ってきた大葉(たいよう)のことをふと思い出した。  確かあの時は、倍相(ばいしょう)課長とのランチのために、大葉(たいよう)が一生懸命作ってくれた弁当を、仁子(じんこ)に食べてもらおうかな?とか考えていて。  とってもとってもやましかったから、大葉(たいよう)と視線が合うなり思わず目をそらしてしまったのだ。    理由(わけ)もなく羽理から塩対応されたことを不審に思ったのだろう。  大葉(たいよう)が、部長室に引っ込むなり打ち込んできたと(おぼ)しきそのメッセージに、何の反応もしないまま昼休みもそろそろ終わりの時刻とか。
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