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白の七分袖ハイネックニットに、ブルーデニムのジーンズを合わせて、ベージュのロングジレを羽織った綺麗系お姉さんコーデのその人は、身長一六五センチくらいだろうか。
キャメル色のピンヒールを卒なく履きこなして背筋をピンと伸ばしているからか、実際よりも幾分背が高そうに見えて。
(目鼻立ちのキリッとした、綺麗なお姉様だぁー)
凛とした空気をまとうその人は、三十代半ばくらいかな?と目星をつけた羽理だ。
仕事がバリバリ出来そうな彼女の雰囲気に、自然と憧れの吐息がこぼれた。
***
「だから……分かんない人ねぇ。屋久蓑大葉を呼び出して?って言ってるだけじゃない。一羽柚子が来たって伝えてくれたらマッハで飛んで来るはずよ?」
美人さんだなぁ~と思いはしたものの、自分とは接点もなさそうだし……とそのまま通り過ぎようとした羽理だったのだけれど――。
受付嬢へ向けて発せられたセリフのなかに、不意に大葉の名前が出てきて、我知らずドクン!と心臓が反応してしまった。
(え? ……部長の名前を聞いただけで不整脈?)
今まではそんなことなかったのに、何だか胸がざわついて落ち着かない。
「荒木さん?」
どうやら無意識に立ち止まっていたらしく、横を歩いていた岳斗に数歩先から怪訝そうな視線を向けられて。
羽理は慌てて「あ、すみませんっ」と岳斗に追いついたのだけれど。
「バカッ。お前何やってんだよ!」
乗り込んだエレベーターの扉が閉まる直前、隙間から、大葉がそんな言葉とともに慌てたように駆けてくる姿と、「たいちゃん!」という嬉しそうな女性の声が聞こえてきて。
羽理は扉が閉まり切るまでの数秒間、そんな二人から目が離せなかった。
「へぇ~。あの気の強そうな綺麗な人、屋久蓑部長の知り合いだったんだねぇー」
立ち尽くしたまま、身動きが取れなくなっていた羽理の横からスッと手が伸びてきて、操作パネルの【4】をポンッと押しながら、岳斗がどこか感心したようにポツンとつぶやいた。
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