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(いや多分そこ、私の部屋ですよ?)
羽理の家なのだから、お風呂場を出たら羽理が好きで集めている猫グッズだらけの空間が広がっているはずなのだ。
バスマットだって、ちょいデブ体型がチャーミングな癒し系の不細工だけど可愛いニャンコがダラーンと寝そべっているデザインだし、洗面所に掛けてあるフェイスタオルも、お風呂あがりに使おうと思って用意してあるバスタオルも、みんなみんな猫柄で統一してある。
(って言うより貴方、脱衣所側から風呂場側へいらしたんじゃないんですか? 何を今更驚きますかね?)
そんなことを思いつつ。
(それにしてもどうしよう! タオルも服もみんなみんなあっち側だよぅ!)
擦りガラスの向こう。
愛しの猫ちゃんバスラグの上に立ち尽くしていると思しき長身男性の裸体がぼやぁーっと透けて見えている。
(やだっ。案外お尻とか引き締まっててスタイル良くない? さっきたまたま! 不可抗力で! 見ちゃった股間も立派……、あ、いや、そこはどうでもいいんだけどっ。……屋久蓑部長、ノーマークだったけど新作は彼をモチーフにするのも有りかも♥)
なんて、一瞬恋愛妄想作家としての血が騒いでエロ的思考に囚われそうになった羽理は、ダメダメ!と気持ちを切り替えた。
「あ、あのぉ……。とりあえずそこ、退いてもらっていいですか? タオルとか服とか取りたいんです。お願いします……」
……何でもいいから身体を隠せるものを取らせてください!
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