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自分の行動がおかし過ぎて、羽理はそれもイヤだったのだけれど。
ずっと、待たせていることを言い訳してくれた上で、羽理のことを申し訳なさそうに呼び出してくると思っていた大葉が、呼び出し自体〝中止〟だなんて有り得ないことを言ってくるから。
羽理はモヤモヤした気持ちを抱えつつも、それに一言『分かりました』と打ち返した。
だが素っ気ない印象を与えるはずだった六文字は、折れ耳猫が嬉し気に頭を囲むように腕全体で〇を形作っているコミカルなイラストのスタンプに自動変換されて。「あ、違う!」と思った時には、指が自然な流れ。送信ボタンをトトッとタップしていて、そのまま送信してしまっていた。
正直、そんな可愛らしいスタンプを送るような気分ではなかったので、すぐさま送信取り消しをしようと思ったのだけれど、送るなり既読になってしまってすごすごと諦めた羽理だ。
(……もっと素っ気なく「りょ」とか送ってやればよかった!)
約束を破るなんて最低ですよ!?と言う気持ちを返信に込めたかったのに。
結局、こんな些細なことの積み重ねで、大葉にとって自分は軽い存在になっていくんだろう。
小さく吐息を落としながらそこまで考えて、羽理はハッとする。
唯一付き合ったことがある元カレにですら、そんな面倒くさいこと思ったりしなかったのに。
(私、大葉に甘やかされ過ぎてワガママになってる……?)
そう気が付いた途端、更に気持ちが沈んで……。こんなことではいけないと思うのに、モヤモヤが消せない自分に物凄く落ち込んだ。
***
溜め息を落としては仕事が一向に捗らない様子の羽理を、さすがにおかしいと思ったんだろう。
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