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いつもより熱めに設定したお湯を浴びながら、羽理は何だか分からないけれどポロポロと溢れてくる涙に戸惑って。
(あの綺麗な女性が来たから、大葉は私のことなんてどうでも良くなってしまったんだよね?)
そう思ったら、信じられないくらい心が乱れた。
(私、こんな感情知らない……)
羽理は次から次に零れ落ちる涙をシャワーで誤魔化しながら、懸命に頭を洗って身体をボディソープの泡で包んで。
洗顔料で顔も綺麗に洗ったけれど、それでも涙はなかなか止まってくれなかった。
羽理は涙が引くのを待つのを諦めてシャワーを止めると、風呂場から出ようとドアを開けた――。
***
「えっーーーっ!? どういうことぉ!? 貴女、どっからわいてきたの! っていうか、誰!? 何でここにいるの!?」
突如投げかけられた矢継ぎ早な黄色い声に「えっ?」とつぶやいて視線を上げると、目の前にナイスバディな裸の女性がいて。
ほろほろと涙を流しながら濡れそぼったままの羽理を指さしながら大きく目を見開いた。
問われた羽理も、何が何だか分からなくてすぐには答えられなくて。
泣き過ぎて痛む頭を抱えながら見回せば、どうやらそこは大葉の家の風呂場のようだった。
でも。
目の前にいるのはもちろん屋久蓑大葉なんかではなく、先ほど会社の受付で見かけた綺麗なお姉さんで。
サッとバスタオルで自分の身体を包みながら羽理をじっと見つめてきたその人の視線に耐えきれなくなって、羽理がギュッと身体を縮こまらせたと同時。
「ねー、たいちゃん! 私がいるのに女の子連れ込むとかどういう神経してるの!?」
羽理の横をスッと通過した女性が、脱衣所の扉を細く開けて、すぐ先に続くキッチンへ向かって声を掛けた。
「はぁ? 柚子、何をわけの分からんことを……」
そんな声とともに近付いてきた足音とともに、脱衣所の扉が大きく開けられて大葉が顔を覗かせた。
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