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外の男の二の舞を恐れて気持ち扉から距離を置きながら、言外に戸惑いと羞恥心を滲ませて恐る恐る風呂場の外へ声をかけたら「す、すまん!」と存外塩らしい声が返ってきて、ぼんやりと見えていた裸身が遠ざかった。
それでも心臓バクバク。
半信半疑の羽理は恐る恐る扉を薄く開くと、外の様子を窺って。
そぉっと手を伸ばして、脱衣所に置いてあった白黒猫が描かれたバスタオルを早技で浴室に引っ張り込んだ。
途端ガシャガシャッ!と騒がしい音がしたので、タオルを取った拍子にそこら辺のものを巻き込んで落としてしまったらしい。けれど、今はそれどころじゃなかった。
ミディアムロングをミルクティーベージュに染めた羽理のちょっぴり癖のある髪の毛からは、ポタポタと水滴がしたたっている。
だけど髪を拭くのも身体を拭くのも後回しにしなければ、と思う程度には混乱中。
そもそもあの裸の男性――多分屋久蓑部長――ってば、びしょ濡れのままどこに行きましたかね!?
羽理の住んでいるアパート。お風呂場は割と玄関近くに位置している。
だから玄関扉が開閉すれば音が聞こえてくるはずなのだけれど、その気配はないからきっとまだ家の中にいると思われる。
(まぁ、すっぽんぽんで外に出たら通報されるだろうし?)
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