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バスタオルを身体に巻き付けて、そろぉーっと浴室の外を窺い見たけれど、どうやらもう脱衣所にはいないみたいだ。
足元に散らばったボディケアクリームなどの容器を避けつつ、フカフカの猫ちゃんバスマットの上に乗ると、いつもは自分が使うまでは乾いているはずのそれが湿っていた。
(夢、じゃなかったってことだよね?)
そのことに、自分以外の濡れそぼった誰かがそこへいたことを妙に生々しく実感させられた羽理は、タオルドライも中途半端なままの身体にいそいそと服を身につけた。
までは良かったのだけれど。
(あーん、私のバカッ! ブラがないじゃないっ)
羽理は寝る時はブラジャーをしない派だ。
パジャマにしている大きめの白いロングTシャツは、左胸に握りこぶし大の黒猫の可愛い顔が描かれていて「I LOVE CAT」のロゴが入っている。
むしろ柄が大きいのはバック側。背中の右半分に脇下を誰かに両手で掴まれて、ダラーンと伸びきった黒猫の絵柄があって、そばに「ニャー」と手書き風文字で鳴き声が描かれているのだけれど。
言ってしまえばかなりシンプルなデザインなのだ。
要するに!
ブラがないと結構な割合で胸元のシルエット――乳首とか乳首とか乳首とか!――がクッキリ見えてしまう。
(あああ。せめて黒色のTシャツにしておけばよかったぁ!)
オマケに暑いし、一人暮らしだし、誰も見やしないでしょ?という安心感から、いつもの様にズボンの類いすら用意していないという体たらく。
(せめて短パンとか普段から履くようにしとけばよかった!)
などと悔やんでも後の祭りだ。
(そ、そうだ!)
そんな中、苦肉の策を思いついた羽理は、そろそろと棚に手を伸ばす。
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