17.ちぐはぐな二人

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 上司から呼ばれて行ってみれば、「会議室で話しましょう」とわざわざ移動させられて。  何の話かと思ったら、開口一番そんな言葉。  羽理(うり)から『約束を破られた』と泣きそうな顔で言われていた仁子(じんこ)は、岳斗(がくと)の言動に何となくカチンときて。  思わず上司なことも忘れて彼に詰め寄ったのだ。 「羽理とのランチの約束をすっぽかしたって本当ですか!?」  と――。  だが、それに対する岳斗の反応は予想に反して「え?」という間の抜けたもので……。しかも二人でのランチはちゃんとしたと言う。 (どういうこと? じゃあ羽理が言ってた相手って誰なの? すっぽかされた約束ってなに?)  仁子は混乱しまくって、すぐにでも真相を知りたくなった。  でも、残念ながらそれは目の前の上司とは関係ない話のようだったから。  仁子は羽理に直接聞こうと思ったのだけれど。  それと同時、いくら上司に口止めされたからと言って……羽理に『あなたの不整脈は病気じゃなくて恋のときめきだよ?』と教えないのは〝友達として〟どうなの?とも思ってしまう。 「やっぱりちゃんと教えてあげよう」  早退した羽理に様子うかがいのメッセージを送っておよそ三十分後くらいにそう決意した仁子は、善は急げとばかりに羽理に電話を掛けてみたのだけれど。  携帯からは『おかけになった電話は電波の届かないところにあるか、電源が入っていないためかかりません』。  そんな無情なアナウンスが流れるだけで、一向に繋がらなかった。
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