18.飛ばしすぎ?

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(お、OKもらったし……キスしたいって言っても受けてくれる、よ、な?)  そんなことを思いながら「羽理(うり)……」と声を掛けようとした矢先、羽理が「あっ」と小さくつぶやいて足元に視線を落として。  くそっ、タイミング!と悔しく思いながらも羽理の視線を追ってみれば、いつの間に来たのだろうか?  二人の足元に尻尾の短い小太りな三毛猫が来ていて、抱き合う羽理と大葉(たいよう)を見上げてでスゥッと目を細めた。 「にゃぁぁぁぁーん」  そのくせ見た目のイメージとは随分かけ離れた愛らしい声で甘えたように鳴くから、大葉(たいよう)は、(もっと野太い声を出せ!)と心の中で突っ込んだのだけれど。  次の瞬間、その猫から小馬鹿にしたようにニタリと笑われた気がしてしまった大葉(たいよう)だ。 (チェシャ猫!)  まるで『不思議の国のアリス』に出てくる、わけもなくニヤニヤ笑う大口をしたあの猫じゃないか、と思って。  気味悪さにヒッとなって、思わず腕が緩んだと同時。 「焼き鳥の三毛ちゃん!」  言って、羽理がスルリと大葉(たいよう)の腕をすり抜けてしまう。  本当はしゃがみ込んで撫でたかったんだろうが、一瞬腰を落としかけてノーパンな心許(こころもと)なさに負けたみたいに中腰のまま中途半端に動きを止めた。  でも手は猫の方へ伸びたままで。 「お、おいっ、羽理っ! 下手に手を出すと不思議の国に連れて行かれちまうぞ!?」  自分の中ではすっかり〝チェシャ猫〟認識なので、思わずそう言ってしまったのだけれど。  幸い、三毛猫は羽理が手を伸ばすより先にタタッと駆け出すと、神社脇の植込みに姿を消した。  それを無言で見送ってすぐ――。 「あのっ、不思議の国って何ですか?」  と羽理が大葉(たいよう)を見上げたのと、 「なんで猫なのに鳥なんだ!?」  と大葉(たいよう)が羽理に問い掛けたのとがほぼ同時で。  即座に二人して 「どう見てもチェシャ猫だからだ!」 「あの子と焼き鳥をシェアしたからです!」  とこれまた同時に答えて、何だか可笑しくなって顔を見合わせて笑ってしまった。
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