19.僕じゃダメかな?

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「私は……」  大葉(たいよう)の言葉に、羽理(うり)が真剣に箱の中を睨みつけて……。  結局「わーん、どっちも美味しそうで選べませんよぅ!」と()を上げるから。  大葉(たいよう)は思わずケーキを買ってきた岳斗と顔を見合わせると、ぶはっと吹き出した。 「選べねぇんなら仕方ねぇな」  言って、羽理の手から箱をサッと取り上げると、ふたをしてしまう。 「えっ!? あ、あのっ、大葉(たいよう)!?」  大葉(たいよう)は羽理が眉根を寄せて不満そうに見上げてくるのを無視して、「なぁ倍相(ばいしょう)課長、別にケーキなくても構わねぇだろ?」と岳斗(がくと)への質問でかわして。  岳斗がクスクス笑いながら「もちろんです」と答えた。  そんな男衆ふたりに、「で、でもっ。何か申し訳ないですっ」とソワソワする羽理に、ケーキの箱を冷蔵庫へ仕舞い終えた大葉(たいよう)が「いや、お前からケーキ取り上げる方が申し訳ねぇわ! 後から一人でじっくり味わえ」と返して、岳斗もそれに被せるように「元々荒木(あらき)さんに買ってきたモノだから。気にしないで?」と微笑む。  結局、出してあった皿も仕舞われて、三人の前には大葉(たいよう)()れて来てくれた、ベルガモットの香りがふぅわり(ただよ)う、上品なアールグレイティーのみが残った。 *** 「羽理(うり)、お前、あれだ。客用のティーカップとかないのは結構問題だぞ?」  大葉(たいよう)がそう言ったのも無理はない。  何しろ、いま三人の目の前で飴色の液体がゆらゆら揺蕩(たゆた)っているのは、三者三様のマグカップの中で。  どれも猫柄なことだけは共通していた。
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