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「あ、あのっ! ……紅茶っ! すっごく美味しいですねっ!?」
二人のピリピリしたムードに耐え切れなくなった羽理が、紅茶を褒めてマグを口元に持って行ったのだけれど。
「熱っ」
動揺のあまり、よく冷ましもせずにコップを傾けてしまった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
途端、二人から滅茶苦茶心配されて、居た堪れなくなった羽理だ。
「へ、平気です、ので」
ちやほやされ過ぎて、何だか落ち着かない。
慣れないことに所在なくうつむいたら、変な沈黙が落ちて――。
***
「で、倍相課長。今日は何をしにここまでいらしたんですか?」
そんな気まずい沈黙を破ったのは大葉だったのだが。
発せられたセリフは決して雰囲気が良くなりそうな話題ではなかったから。
羽理の緊張は絶賛継続中のままだ。
「何って……。見てわかりませんか? お見舞いですよ。実はどこかの誰かさんの浮気疑惑のせいで、今日は彼女、会社ですっごくしんどそうだったんです」
それに対する岳斗の返しも、いつもののほほんとした空気感はどこへやら……なギスギスしたものだったから、羽理はますます針の筵の上に座らされているような気分に陥ってしまう。
「直属の上司として、早退させた可愛い部下のことを気に掛けるのは当然のことでしょう?」
岳斗の言葉に羽理がソワソワと顔を上げたら、岳斗が「ね?」と付け加えてニコッと微笑んだ。
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前のページに出ているマグについてどんなのかな?と気になった方、おられましたら❤️↓
https://estar.jp/novels/26179568/viewer?page=169
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