19.僕じゃダメかな?

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「何でしょうか?」  そこで大葉(たいよう)はふと思い出したように自分のすぐ(かたわ)らで、こちらの会話に耳をそばだてている羽理(うり)を見詰めると、無言で立ち上がって羽理が道中羽織っていたブランケットを手に戻ってきた。 「――羽理。さっきから気になってたんだがな。足、寒いだろ? もうちっと丈の長いズボンを履いて来い」  言って、手にしていたブランケットを、羽理の太ももが隠れるようにばさりと落とした。 ***  大葉(たいよう)に指摘された羽理(うり)は、今やっと気が付いたと言う風に自分の格好に目をやって。  ハッとしたように岳斗(がくと)を見詰めてから真っ赤になる。 「きっ、着替えてきます!」  ギュウッとブランケットの前を閉じるように布地に(くる)まって、ワタワタと脱衣所の方へ走って行く羽理を見送ってから、岳斗がポツンとつぶやいた。 「――もしかして彼女の肌を僕に見られるのが嫌だったんですか?」  クスッと笑いながら「けどちょっと遅かったですね。もうしっかり見ちゃいました」と付け加えた岳斗(がくと)に、大葉(たいよう)憮然(ぶぜん)とした表情で、「頭ぶん殴って記憶喪失にしてやろうか」と、聞いたことのないような低い声で不穏(ふおん)なことを言う。  岳斗はそれに肩をすくめて見せると、 「――冗談はさておき、今更羽理ちゃんの露出度を指摘して彼女を追い払うような真似までして、僕に言いたいことは何ですか?」  気持ちを切り替えるように居住まいを正すと、こちらも低音で問い掛けてきた。
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