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「何でしょうか?」
そこで大葉はふと思い出したように自分のすぐ傍らで、こちらの会話に耳をそばだてている羽理を見詰めると、無言で立ち上がって羽理が道中羽織っていたブランケットを手に戻ってきた。
「――羽理。さっきから気になってたんだがな。足、寒いだろ? もうちっと丈の長いズボンを履いて来い」
言って、手にしていたブランケットを、羽理の太ももが隠れるようにばさりと落とした。
***
大葉に指摘された羽理は、今やっと気が付いたと言う風に自分の格好に目をやって。
ハッとしたように岳斗を見詰めてから真っ赤になる。
「きっ、着替えてきます!」
ギュウッとブランケットの前を閉じるように布地に包まって、ワタワタと脱衣所の方へ走って行く羽理を見送ってから、岳斗がポツンとつぶやいた。
「――もしかして彼女の肌を僕に見られるのが嫌だったんですか?」
クスッと笑いながら「けどちょっと遅かったですね。もうしっかり見ちゃいました」と付け加えた岳斗に、大葉は憮然とした表情で、「頭ぶん殴って記憶喪失にしてやろうか」と、聞いたことのないような低い声で不穏なことを言う。
岳斗はそれに肩をすくめて見せると、
「――冗談はさておき、今更羽理ちゃんの露出度を指摘して彼女を追い払うような真似までして、僕に言いたいことは何ですか?」
気持ちを切り替えるように居住まいを正すと、こちらも低音で問い掛けてきた。
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